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 ボクが通う女装男子校には、特殊な指定品がある。  もちろん、それは制服ではない。  女装男子のみが通う女装男子校なのだから、制服が女子用セーラー服なのはあたりまえ。体操服には外見上男女の差はないのだろうが、指定水着が女子用なのも当然。  特殊な指定品が存在するのは、プリーツスカートの下。制服同様見た目は女子用でありながら、女装男子専用ならではの機能を持つ触手貞操帯だ。  とはいえボクたちは入学前、装着が強制される貞操帯が、触手貞操帯であるとは知らされていなかった。  入学早々の詳細なサイズ測定も、あくまで通常の女装男子用貞操帯の製作のためとして行なわれた。  さらに、できあがってきた貞操帯は、陰部金属板とペニスケースの内側にヌラヌラと粘着質の光沢を放つ赤いペーストが塗り込められているだけの、ただの女装男子用貞操帯にしか見えなかった。  見る者が見れば、お尻部分に排泄用のくり抜きがないことを異様に感じただろうが、そのときのボクは貞操帯自体を見たことがなかった。  装着手順も、通常の女装男子用貞操帯と同じ。  腰骨の出っ張りに横ベルトを這わせ、おへその下で仮留め。ペニスケースにおちんちんを収めながら縦ベルトを持ち上げる。  ペーストのおかげか、金属板のひんやりした感じはいくぶん弱い。ただその厚みがあるぶん、ペニスケースの中は窮屈だ。勃起どころかその兆候が始まるだけで、とてつもない苦痛に襲われるのではないかと思えるほど。  そのことに緊張感を覚えつつ、横ベルトを仮留めした金具に組み合わせ、円板状のプレートをかけながら、南京錠で固定する。  担任の女装教師の指導で貞操帯を着けて10分ほど待つと、なにかがモゾモゾと蠢くような感触を覚え始めた。 「あなたたちの体温により、触手の幼生が覚醒したのです」  担任の女装教師の言葉により、ボクたちは赤いペーストがそれだったのだと、初めて知らされた。 「そ、そんな……」  とまどいの声をあげるクラスメイト。 「触手だなんて……聞いてません!」  抗議の声をあげても、あとの祭り。  女装教師に預けた貞操帯の鍵は、教室の端のタイマーロック式金庫にしまわれている。その扉はマスターキーがなければ、設定された時間がくるまで開けられない。そのマスターキーは、校長室の金庫の中。  ボクたち自身の手ではけっして外せないし、触手の覚醒も止められない。 「じきに訪れるもっと大きい違和感にとまどうと思いますが、大丈夫ですよ。すぐに慣れますし、長期連用でも全く問題ありません」  なぜか頬を紅潮させてそう言った女装教師自身が、女装男子校の卒業生。入学以来ずっと、触手貞操帯を着け続けている。  とはいえ、女装教師の言う『じきに訪れるもっと大きい違和感』は、ほんとうに慣れることができるとは思えないほど、激しく猛烈なものだった。 「ぃうッ……!?」  すぐそばで誰かが変な声をあげた直後、ボクの貞操帯でも異変が起こった。  まず覚えたのは、覚醒し蠢き始めた触手のうち1本が、お尻の穴をこじ開けようとする感触。 「……ッ!?」  侵入を拒もうと肛門を引き締めるが、触手はかまわず侵入してくる。 「そろそろ、肛門への侵入が始まっているようですね。初めての人は反射的に括約筋を締めようとするでしょうが、侵入時の触手は小指の先より細い。おまけに自ら分泌する粘液で潤滑されていますから、侵入を拒むことはできません」  担任の女装教師が言ったとおり、細くてヌルヌルの触手は、ボクの意思にかかわらず肛門内に侵入してくる。 「侵入した触手は周辺の触手を取り込みつつ、少しずつ膨張します。具体的な寸法は個人のサイズによりますが、最終的には肛門に栓をし密封してします。とはいえ、そこまでの肥大化は時間をかけて行なわれるので、皆さんが耐えがたい苦痛に襲われることはありません」  女装教師はそう言ったが、触手が肛門内で少しずつ太くなる圧迫感は相当なもの。 「ぅうう……」  ボクを含め多くのクラスメイトが、その違和感にうめいている。なかには、机に手をついて耐えている者もいる。  そして、やがてそれを上回る猛烈な違和感が襲いきた。 「ひッ!?」  狭いケースに閉じ込められたペニスの先端、尿道口からも、触手が侵入してきたのだ。 「ぁひッ!?」 「ぃぎッ!?」  ボクの隣でも、すぐ後ろでも。 「どうやら、尿道からの侵入も始まったようですね。その触手は、肛門のもののように肥大化はしませんが、膀胱にまで達して排尿を管理します。また途中で枝分かれし、精管内にも侵入します」 「そ、そんな……」  担任女装教師の言葉に声をあげたのは、抗議のためではない。  肛門に加えて尿道や精管まで触手に支配されるという事実に、戦慄して愕然としたのだ。  そのあいだにも、ペニスの触手は、尿道を通って身体の奥に侵入してくる。肛門の触手は、ますます肥大化する。  貞操帯の奥で、ボクのお股が触手に支配される。  そしてそれら触手は、貞操帯を外さないかぎり抜くことはできない。  鍵を学校に管理されて、ボクの意思では貞操帯を外せない。 「ですが、慣れてしまえば、触手貞操帯はとても快適なんですよ。皆さんの排泄物や体液は触手が吸収・分解、貞操帯の小水排泄孔を模した部分から、無味無臭無害の液体として排出されます。性欲管理として、強制搾精された精液も同様です。皆さんはもう、下《しも》の心配をいっさいしなくていいんです」  それがほんとうにいいことなのか、それとも不穏すぎる一大事なのか。  ペニスと肛門の猛烈な違和感に翻弄されるそのときのボクには、どちらなのか考える余裕はなかった。  ボクたちが触手貞操帯を嵌めてから、数ヶ月が経った。 『慣れてしまえば、触手貞操帯はとても快適なんですよ』  担任の女装教師が言ったとおり、着けることを強制された装具は、思いのほか快適な代物だった。  ボクの身体を詳細に採寸して誂えられた貞操帯は、緩くて隙間ができることもなければ、きつすぎて肉が痛むほど食い込むこともない。  汗をかいたりして痒くなることが心配されたが、体液を吸収する触手のおかげか、今のところそういった不具合もない。 『排泄物は触手が吸収・分解、貞操帯の小水排泄孔を模した部分から、無味無臭無害の液体として排出されます』  その言葉にも、偽りはなかった。  肛門をこじ開け占拠・密封する触手は、さらにその奥、S字結腸のあたりまで侵入している。それで肛門に到達する前に、排泄物を吸収。便意を感じる前に、それを取り込んで処理する。  それは、膀胱にまで達する尿道の触手も同じ。そこに尿意を感じるほど小水が溜まる前に、吸収処理してしまう。  1日に数度、おしっこしたいと感じるが、それは触手が作りだす疑似尿意。排泄物を処理して作った無味無臭無害の液体を排出するため、それでトイレに行くことを促すのだ。 『皆さんはもう、下《しも》の心配をいっさいしなくていいんです』  ただし、その言葉に対しては、ボクはわずかばかり――いや、実のところ大いに――納得できないところがあった。  たしかに、排泄についてはなんの心配もなくなった。 『性欲管理として、強制搾精された精液も同様です』  性欲管理という言葉の意味ははじめわからなかったが、触手が分泌する粘液に勃起を抑制する成分が含まれているらしく、貞操帯装着以来、おちんちんが勃つことはいっさいない。もし窮屈なペニスケースの中で勃起させたときのことを考えると、そのこと自体はありがたい。  ただしそれは、ボクが自分の意思で、性的に満足できないことも意味していた。  その対策として用意されているのが、女装教師が言った強制搾精。  触手の働きにより、勃起させないまま、溜まった精液を性欲ごと搾り取る行為だ。  具体的には、肛門に侵入した触手の一部が変形し、前立腺を刺激する。それで射精に到達しない者には、ペニスケース内の触手がおちんちんを愛撫する。それでも足りなければ、肛門周辺や会陰部の触手も動員される。  その行為は、一度射精して終わるものではない。  しばらく強制搾精しなくていいよう、触手は何度も、繰り返し射精させ、溜まった精液を搾り尽くす。  そして、精液が溜まったとき始まる強制搾精は、触手が最適と判断したタイミングで、時と場所を選ばず開始される。  たとえそれが、公共の場にいるときだったとしても。  それが始まったのは、今日も教室のなかだった。 「……ッ!?」  肛門触手に生まれた小さなコブが、お尻の奥で前立腺を押す。  キュンキュンと、おちんちんの奥にせつない感覚。  反射的に開ききった括約筋に力を込め、触手を食い締める。 「ん……」  すると肛門にジーンと痺れるような感覚が駆け抜け、吐息を漏らしてしまった。  ボクの官能の高まりに呼応するかのように、触手の動きが妖しくなる。 「ぅ、ん……」  それがさらなる昂ぶりをもたらし、吐息に甘みが混じってしまう。  このタイミングで強制搾精が始まったことは、女装教師やクラスメイトには勘づかれているだろう。  だが、触手貞操帯の特性を知っている彼らは、見てみないふりをしてくれる。  そんななかで、ボクは前立腺に触手の玩弄を受ける。 「ぃ、うん……」  おちんちんの奥のせつない感覚は、ますます大きくなってくる。  肛門の性感は、どんどんボクの官能を煽ってくる。  しかし、射精には至らない。  おちんちんの奥に射精寸前のような感覚は襲いくるが、実際に射精することはない。  実のところ、それはいつものこと。  ボクの貞操帯に植えつけられた触手の個性なのか。それとも、ボク自身が前立腺でイキにくい体質なのか。はたまた、両方の兼ね合いによるものなのか。  理由はわからないが、ボクは前立腺への刺激だけではイケない。  そこで始まるのが、ペニスへの玩弄。  窮屈なケースの中で、縮こまったまま下向きに固定されたおちんちんの周りの細く短い触手が、ユルユルと蠢き始める。  はじめは、竿全体を撫でるように。  それでペニスの快感を呼び覚ましたところで、皮をめくって亀頭を舐めしゃぶるように。 「ぁ、ひ……ッ!」  それで、小さく嬌声をあげてしまった。  その声を必死で飲み込もうとしたが、女装教師やクラスメイトは、ボクがどんな玩弄を受けているか気づいたに違いない。 「く、ぁ……」  歯を食いしばり、亀頭責めに耐える。 「ぁ、ん……」  いや、耐えられてはいない。ただ、翻弄されているだけ。  そして、どれほどの快感に襲われようと、ボクのおちんちんが勃つことはない。触手の粘液の作用で、勃起の兆候すらない。  触手粘液の勃起抑制成分に冒され、触手本体に肛門と尿道を犯され、ボクは快感に翻弄される。 「ぁ、ん、ぅん……」  抑えようとしても、艶声にしか聞こえない吐息が漏れる。  くるおしさにスカートの上から貞操帯の金属板を押さえても、なにも変わらない。  衆人環視のもと、ボクを襲い翻弄する大きな快感。  だが、それでもイケない。  そこで始まる、肛門周辺と会陰部への玩弄。さらには尿道と精管を犯す触手の振動。  新たに生まれた快感が、これまでの快楽に上乗せされる。  もう、抗えない。  ギリギリで踏みとどまっていたボクの理性は、圧倒的な快感の奔流に押し流される。 「ひッ、あッ、ぁあッ!」  ここが教室だとわかっているのに、声が抑えられない。 「ぁあッ、あッ、んあッ!」  喘いでしまうことで、女装教師とクラスメイトの意識がボクに集中してしまうのに。  指摘され注意されることはなくても、注目を集めてしまうのは間違いないのに。 「んあッ、あ、ひぁあッ!」  ボクはあられもなく喘ぎながら、高められていく。  そして、来た。 「んッ……ひッ!?」  ドロリ、と出る。  いや、正確には出ていない。  精管を通過した精液は、尿道を通して吐き出される前に、触手に吸収されてしまう。  そのため、快感はあるが射精の実感はない。  そして、一度イッたからといって、触手は止まらない。  圧倒的な解放感をともなう射精の悦びを堪能できないまま、ボクは責め続けられる。  溜まったものを搾り尽くされるまで、淫らな玩弄は終わらない。 「あ、ひ、ぁああッ!」  また、射精した実感のない到達。  快楽に飲み込まれながら、また絶頂。 (そうだ、コレは……)  女の子の絶頂と同じ種類の悦びだ。  射精の実感を味わえないボクは、女の子みたいにイカされているのだ。 (ち、違う……そうじゃない……)  人間の女の子なら、教室でイキまくったりしない。  女装教師やクラスメイトに見られながらイキ狂うボクは、淫らなメスの獣だ。ボクはヒトの女の子ではなく、メスとしてイカされているのだ。  そうと気づいてみじめな気持ちになっても、触手の責めは続く。  触手に責められながら、ボクは性の快楽に圧倒される。  気持ちいい、気持ちいい。みじめなのに、気持ちいい。  気持ちいい、気持ちいい、みじめだからこそ、気持ちいい。  そう、強制搾精は、触手が最適と判断したタイミングで、時と場所を選ばず開始される。  この場所が、このときが、ボクにとって最適な強制搾精のタイミングなのだ。  教室で、女装教師やクラスメイトに見られているからこそ、より大きな快楽のもと、もっとも大量に射精できるのだ。  そうと思い知らされながら。  自分が露出願望のある淫乱マゾ女装メスなのだと痛感させられながら。 「ぁ、ひ、ぁあ……」  触手に精液を搾り尽くされたボクは、ぐったりと机の上につっ伏した。 (了)

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