従順と貞節と罪と罰(学園祭のジベットクリノリン小説版)2.貞節 (Pixiv Fanbox)
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2023-11-03 09:00:00
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2024-02
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2.貞節
部長の部屋を訪れ、いったんコルセットを外してもらってお風呂を使わせてもらう。
それから選択済みのドロワーズとシュミーズに着替え、コルセットを締め直してもらう。
その際、ほんの少しずつ、数値にすると1センチか5ミリ程度、締め込みがきつくなる。
そんな日々が、1週間ほど続いた頃である。
「一緒に入っていい? 今日はちょっと、汗をかいちゃったの」
シャワーを浴びていたとき、バスルームの外から部長の声が聞こえた。
「はい、どうぞ」
間髪入れず迷いなく答えたのは、あたしが陸上部出身だからだ。
チームメイトと並んでシャワーを浴びることなど日常茶飯事だったし、合宿では一緒に入浴するのもあたりまえだった。
とはいえ、部長とかつてのチームメイトは違う。
チームメイトは仲間だが、部長は私にとって――。
好きな女性《ひと》、というワードが頭に浮かんで、ふと考えた。
(部長に対する、あたしの『好き』って、どういう意味の……)
その問いの答えを、あたし自身で見いだしたとき、部長がバスルームに入ってきた。
意識してしまったがゆえに、胸が高鳴る。
「ど、どうぞ」
胸と下を手で隠し、シャワーを譲ろうとすると、部長は前を隠していなかった。
「あっ……」
一瞬驚いたあと、自分だけ隠すのもおかしいと思い、あたしも手を下ろす。
すると、部長がにっこり笑った。
「コルセットの跡、あまりついてないね」
「えっ……?」
「まる1日締めてると、しばらく跡が残っているものだけれど……肌が若いからかしらね?」
そう言った部長のお腹には、コルセットの跡が残っていた。
「部長も、コルセットを?」
「ええ、今まで気づかなかった?」
「は、はい……ただ、くびれがすごいかただなぁと……」
「うふふ……ありがとう。でも自分でも着けていながら気づかないなんて、サキちゃんは私に興味がないのかしらね」
「い、いえ、そんなことは……」
「ない?」
「はい」
「じゃあ、どんな感じで私に興味があるの?」
そこで、部長の瞳に、妖しい光が宿った気がした。
「私は、サキちゃんのことが好き。サークルのメンバーとか、後輩とかじゃなく、恋愛対象の女性として好き」
さらりと言われて、いっそう胸が高鳴った。
今しがた、あたしが自ら見いだした答え。
部長が好き。サークルの部長としてでも、先輩としてでもなく、恋愛対象たるひとりの女性として好き。
その思いを、途切れ途切れに口にすると、部長があたしの肩に手を置いた。
「嬉しいわ、とっても」
そして、あたしを抱き寄せ、耳元でささやいた。
驚いた。
部長の柔らかい胸があたしの胸に押しつけられ、ドキリとした。
「ぶ、部長……」
「クミって呼んで」
「く、クミ……さん」
あたしが名前で呼んだところで、あたしを抱き寄せる部長、いやクミさんの腕に、力が込められた。
「サキ」
「クミさん」
お互い名を呼び合って、クミさんの背中に手を回す。
「サキ、好き」
ささやくクミさんの吐息が、耳たぶをくすぐる。
「あ、あたしもです、クミさん」
いっそう強く抱きしめられ、押しつけられた乳房に触れるあたしの乳首が、硬くしこり始める。
「好きよ、サキ」
「好きです、クミさん」
言葉で確かめ合いながら、態度でも気持ちを伝えようと強く抱き返すと、あたしの身体の奥に火照りが生まれた。
その火照りが熱となり、女の子の場所に広がる。
広がった熱が蜜になり、その中にジュンと沁みだす。
沁みだした蜜が、肉の割れ目から溢れ始める。
「ぁ……」
思わず漏らしそうになった声を飲み込んだところで、クミさんが耳元でささやいた。
「どうしたの?」
「な、なんでもないです」
「そう、じゃ……」
そこで、クミさんが身体を離した。
「先に上がって、待っててくれる?」
そう言って、お湯を出しっぱなしにしていたシャワーヘッドを手に取った。
女の子の肉の芯に、火照りを残したままのあたしに背を向けて。
お風呂から脱衣場出ると、そこにあったのはサキさんが入浴前に脱いだ下着とコルセット。いつもは脱衣場に用意されている、新しいドロワーズとシュミーズが、今日はなかった。
「あの、クミさん……下着が……」
「ああ、ごめんなさい。部屋に用意したまま、持ってくるのを忘れたわ」
シャワーが止まったタイミングで訊ねると、ドアの向こうからクミさんの声。
裸のまま部屋に戻ると、新品の下着がたたまれて用意されていた。
ドロワーズを手に取り、いつものように穿いて、それがこれまでのものと違うことに気づく。
ドロワーズは、コルセットを着けたままトイレに行けるよう、股間オープンの股割れ式になっている。
とはいえ、ついさっきまで穿いていたドロワーズの股割れ部分は布が重なるようになっており、立った状態ではあたしのお股は隠されていた。
だが、新しいものには、お股の部分の布がなかった。前の部分からお尻にかけて瓢箪形にくり抜かれ、大切な部分が丸見えになっていた。
「こ、これは……?」
クミさんの裁縫ミスなのか。
いや、彼女にかぎって、それは考えにくい。もしミスだったとしても、気づかないわけがない。
ともあれ、勝手に別のものを探し回るわけにもいかず、とりあえずシュミーズも身につけると、そちらはいつもと同じものだった。
そこで、ドロワーズとシュミーズ、それにコルセットも着けた状態で、クミさんが脱衣場から出てきた。
「あの、クミさん……ッ!?」
見ると彼女のドロワーズも、用意されていたあたしのものと同じ構造になっていた。
驚くあたしをよそに、露わになったお股を隠そうともせず、クミさんがあたしの前を横切る。
そしてクローゼットの扉を開け、見たことのない装具を取り出した。
ひとことで言うと、ピカピカと光る金属製のT字帯。異様なのは――金属製というだけで、すでに異様なのだが――横と縦の金属帯が重なる部分と、縦帯の途中のおしゃもじ形に膨らんだ付近の小さな穴が無数に穿たれたプレートに、南京錠がかけられていること。
「そ、それは……?」
「貞操帯よ」
あたしの頭に浮かんだ名称を口にして、クミさんが貞操帯のふたつの南京錠のうち、横と縦の帯が重なる箇所のものに鍵を差し込んだ。
カチッと小さな金属音とともに、南京錠が解錠される。
縦ベルトが外れ、続いて横ベルトも外れる。
南京錠とそのツルに被されていた丸いプレートを机の上に置き、クミさんが貞操帯の横ベルトを、コルセットの上からウエストに巻きつけた。
横帯片側の端のピンをもう片方の穴に嵌め、縦の金属帯を手に取る。
それから、少し脚を開き、縦の金属帯を持ち上げていく。
ドロワーズの開口部から露出したクミさんのそこが、金属に覆われていく。
「ん、ふ……」
横ベルトのピンに縦ベルトの穴に嵌まる刹那、クミさんが小さく吐息を漏らした。
そして、再び南京錠に円形のカバーを取りつけながらピンにかけ、つまんだ指に少しだけ力を込める。
直後、カチリと小さな音とともに、クミさんの股間は金属製の装具で覆われた。
ドロワーズの大きな開口は、お股の器官と金属板のあいだに、布を挟まないようにするためのものだったのだ。
そして貞操帯を着けた今、そこは金属板に隠れ、股間の肌は見えていない。
「クミさん、ずっと貞操帯を……?」
「いいえ、今日が初めてよ」
「じゃあ、どうして……?」
「サキに貞操帯を嵌めるなら、自分も着けなきゃいけないから」
それはなんとなくわかっていた。
貞操帯がふたつあり、そのうちひとつをクミさんが着けたことで、もうひとつは私のものだと思っていた。
だが、わからないのは、どうしてふたりで貞操帯を着けるのかということだ。
そのことを訊ねると、クミさんは穏やかにほほ笑んで教えてくれた。
「貞操帯はね、貞節の装具なの。女性の大切な場所に誰も、自分自身ですら触れられなくして、最愛のパートナーに鍵を託す。それで、その人への貞節を誓う……」
そこまで言って、クミさんが机の上に、スペアも含めてふたつの小さな鍵を置いた。
「私は、サキへの貞節を誓う。その証として、私の鍵をサキに託す……サキに告白できて、サキが告白を受け入れてくれたら、こうしようと決めていたの」
「だ、だから……あたしにも?」
「ええ、サキにも貞操帯を着けてもらいたい。もちろん無理強いはしないし、装着を断っても、私のサキへの思いは変わらないけれど」
その言葉で、クミさんの気持ちが伝わった。
愛しい女性の真摯な気持ちが伝わり、私の心は決まった。
「あたしも、クミさんと一緒がいいです……あたしにも、貞操帯を嵌めてください」
そう言い終わったとき、クミさんがこれまでで一番、嬉しそうな表情を見せてくれた。
いつものようにコルセットを締めたあと、クミさんがメジャーでウエストのサイズを測った。
そして、編み上げ紐の結びめをいったん解いて、もうひと締め。
おそらくそれは、これから貞操帯を着けるから。硬い金属で作られた貞操帯のサイズに、コルセットの締め込み具合を合わせたのだ。
とはいえ、昨日よりずっときついということはない。
初日で5.5センチ、その後1日あたり5ミリから1センチ、少しずつ締め込みを強くしていくことで、あたしのウエストは貞操帯の横帯にぴったりになっていたのだろう。
(たぶん……いえ、きっと……)
貞操帯はあらかじめ用意されていて、その存在をあたしに知らせないまま、クミさんは横帯のサイズに合わせて締め込みをきつくしていったのだ。
上から貞操帯を着けるための、開口部つき専用ドロワーズまで用意して。
それは、私を罠に嵌めたとも言える行為。
だが、そうと気づいても、嫌な気分にはならなかった。
(だって……)
開口つき貞操帯用ドロワーズは、クミさんも穿いているから。貞操帯も、彼女が着けたものと同じだから。
ただ、愛しい女性《ひと》に望まれて、その人と同じ装具を身につけるだけのこと。
(そう、あたしは……)
クミさんと、同じ状態になるのだ。
そうと気づいたところで、貞操帯を手に、クミさんがあたしの前に膝をついた。
彼女の眼前には、ドロワーズの開口部から露わになった私のお股。
恥ずかしい。
それは、ただそこを見られているからというだけではない。
もちろん、見られているだけでも恥ずかしいが、今の私はふだんと違う。
先ほどの、お風呂場での短い睦み合い。お互いの気持ちを告白し合ったうえでのささやかな行為で、私の肉は昂ぶった。
その名残りが、お股に残っているかもしれない。
いや、昂ぶりによる肉の火照りは、まだ身体の奥のほうにある。名残りどころか、私は今も緩く昂ぶり続けている。
その自覚があるから、よけいに恥ずかしいのだ。
とはいえ、クミさんはあたしの昂ぶりには気づかなかったようだ。あるいは、気づいていながら、そ知らぬそぶりをしてくれたのかもしれないが。
「それじゃ、貞操帯を着けるね」
しゃがんだ姿勢であたしを見上げ、ふだんと変わらぬ調子でクミさんが告げた。
「はい」
瞳に宿る妖しい光にドキリとしつつ答えると、コルセットでできたくびれに、金属製の横帯が巻きつけられた。
クミさん自身が自分に着けるときにしたように、片側のピンをもう一方の穴に嵌めて仮留め。
「ちょっとだけ開いて」
言われて、クミさんがしたように脚を開く。
すると、開いた両脚のあいだで、クミさんがぶら下がっていた縦帯をつかんだ。
そして、ゆっくりと引き上げていく。
側面から見るとU形になっている縦帯が、まずドロワーズの生地触れる。
その感触を間接的に感じとった直後、開口部から露出した肌に、金属板が当たった。
「ひ……」
と小さく声をあげたのは、金属板が冷たかったから。
「ひっ……」
続いて声が出たのは、金属板の後ろ部分の丸い開口部に、肛門周辺の肉が軽く押しつけられたタイミング。
「ぁひ……」
これは、小さな穴が無数に穿たれたプレートの奥で、女の子の肉が溝のような場所に嵌まり込んだ際の声。
それとほぼ同時に、縦帯上端の穴が、横帯のピンに組み合わされていた。
縦ベルトを片手の指で押さえながら、クミさんが南京錠と円形の金属板を取る。
「うふふ……」
そこで、クミさんがあたしを見上げて妖しく笑った。
その妖艶な表情にドキリとした直後――。
カチリ。
小さな金属音とともに、あたしのお股は封印された。
「これは、私の鍵……」
下着と貞操帯の上に服を着て、クミさんが小さな鍵をお揃いのふたつのキーホルダーにつけた。
「こっちは、サキの鍵……」
同じように、今しがた着けたあたしの貞操帯の鍵も、ひとつずつキーホルダーにつける。
「ほんとうは、私の鍵はスペアも含めてサキに託したいし、サキの鍵はふたつとも私に託してもらいたい。でも……」
クミさんが用意してくれた貞操帯は、長期連用に実績のある老舗メーカーのもの。
初期の違和感にさえ慣れてしまえば、自分でも性器に触れられないこと以外、長く着け続けても大きな問題は起きない。
そのうえ、毎日ここに着て貞操帯を外し、下着を脱いで入浴できる。下着は新しいものに交換できるし、貞操帯の清掃も行なえる。
とはいえ、人は予想しない急病になることがある。病気とは言えないまでも、体調が悪くなるときもある。その際、貞操帯を着けたままでは、コルセットを緩めることもできない。
「だから念のため、お互いの鍵だけじゃなく、自分の鍵も持っておくの。だけど……」
そこでいったん言葉を切り、クミさんがキーホルダーのひとつをあたしにわたした。
「急病や体調が悪くなったとき以外、私は貞操帯を外したくない。サキにも、体調不良やどうしても耐えられなくなったとき以外、貞操帯を外してほしくない」
あたしも、同じ気持ちだった。
貞操帯はクミさんに望まれて、クミさんに嵌めてもらったものなのだ。
その気持ちを伝えると、クミさんは穏やかにほほ笑み、ふたりの鍵のキーホルダーをあたしに握らせて告げた。
「耐えられなくなって貞操帯を外したら、外したことと外した理由を、お互い正直に告白し合いましょう。それでいい?」
もちろん、異存はなかった。むしろ、望むところだった。
「はい、わかりました」
だから、キーホルダーを受け取りながらしっかり答えた私は、気づいていなかった。
そこに、クミさんが罠をしかけていることに。