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小説版(こちらのキャプションSSの続き)も近日公開予定です。 そういえば、大昔にこんなの描いてました。https://www.pixiv.net/artworks/50018069 私、あまり成長してませんね。  ジベット、中世の拷問、あるいは晒しの刑具。大まかに人の形を象った、極小の檻である。  クリノリン、19世紀半ばに発明され、貴族や資産家のあいだで流行した、スカートを膨らませるためのアイテムである。  このふたつを合体させたジベットクリノリンという拘束具を今、あたしは装着されている。  ドロワーズとシュミーズというクラシカルな下着を着けたうえにコルセットを締められ、さらに貞操帯を嵌められた状態で、あたしはジベットクリノリンに閉じ込められ、晒されている。  とはいえ、この場にいるほとんどの人は、この世にひとつしかないオリジナルの拘束具に、あたしが囚われていることを知らない。  当時のものを複製した衣装――それは貴族や資産家の娘のものではなく、郊外の裕福な農家の娘のよそ行き着をイメージしたものらしい――で、ジベットクリノリンという大がかりな拘束具の身体部分は覆われている。被された袋で、頭の拘束具も隠されている。  そもそも、あたしはこの場にいないことになっているのだ。  わがサークルが学園祭の演しものとして企画した、近世から現代にかけての服飾の歴史ショー。この衣装を着る予定だったあたしは、イベント当日、体調を崩して欠席したことになっている。  それで、装具と衣装だけが展示されている体《てい》にされているのだ。  ここにあたしが閉じ込められ、囚われていることを知っている人は、たったひとり。  あたしをこんな状態に陥らせた、いや陥らせてくれた、恋人にして女主人《ドミナ》のみ。 「ン、ふ……」  あたしがここにいると誰にも気取られないよう、小さく、静かに吐息を漏らす。  あたしは、罪を犯した。  ジベットクリノリンへの閉じ込めと秘密の晒しは、その罪に対する罰なのだ。 (いえ……)  ほんとうは違う。あたしの女主人は、あたしを――。  そこで近くに観客の気配を感じ、あたしは思考を中断して息をひそめた。

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