主任さんと後輩君005 (Pixiv Fanbox)
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●残業前の時間
「さて、開発部用のリサイクル資材の候補リストも出来たし、……じゃあ今日は、ちょっと遅くなるけど、主任さんが作ってくれた企画の方を進めてから帰るかな……」
「あの、主任さん」
「…………」
「寝てる……」
「主任さんは寝てるアイコンがあるのに、何故、僕には無いのか……」
「……スゥー……」
「って、インスタントに作らなくていいよ!! 寝てることになるだろ!」
「……あ、主任さん、またポインタを下に落としてる」
●何となく思い出して
「……ポインタを拾ってるときの風景です。わざわざ見てるわけじゃないぞ」
「でも主任さん、寝てる時もちゃんとガードしてるよね……」
「…………」
「……スゥー……」
「――って無理に使わなくていいよ! 突発性睡眠ナンタラかよ僕……!」
「……ともあれ、うん。主任さんは真面目な人だよね。僕がちょっと、そこに甘えてるというか、駄目なんだと思う」
「…………」
「主任さん? あの、すみません」
●何となく自分を正す
「……え!? あ、御免、寝てたね」
「お疲れでーす。主任さんの方、今日の業務は終わってますし、僕の方も、頂いた企画の方、明日に回して今日はアガろうと思うんですけど」
「あ、そうだね。じゃあ、途中まで同じ道だし、帰ろうか」
●そして確認
「――総務狙った企画ってのはアイデア面白いかもね。予算は向こうが確実にとってくるだろうし、実績出たら他の企業向けにも出来るし」
「プレゼン厳しそうですけどねー」
「まあそこは後輩君がどうにかするということで」
「アッハイ、頑張ります」
「そうそう。そんな感じで……」
「……で、ちょっと話変えるけど、最近、夢見はどう?」
「前にも気にしてましたねソレ。夢見って言うと……」
「以前、私に言ったような夢、見てたりする?」
「アー……」
「すみません。続いてます。こっちで制御効いてないっていうか……」
「ああ、いやまあ、君の夢のことだから、咎めないというか、咎めても仕方ないんで」
「ただまあ、嫌だったり、……する?」
「……主任さんに申し訳無い、っていうのはあります」
「僕がもっと、主任さん以外にも女性の友人いたりすると、違う人が夢に出てくるのかな、って思うんですが、でも、僕が今、一番頼ってるのは主任さんなんで、何となく納得もしてしまうというか……」
「そ、そうなんだ……」
「ま、まあ、私の方では咎めないから、後輩君の方で問題無ければそれでいいからね?」
「あ、でも」
「? 何かマズイことあった?」
「夢の中でビックリして飛び起きるんで、ビミョーに健康悪い気がするのと、寝不足になってるのかな……。就業中寝てたら、それが原因です」
「……なかなか面倒な二次被害が出てるもんだねー……」
●帰って思って
「よし帰宅、帰宅――」
「ハー……。主任さんに正直にいろいろ話して良かった……、かな? 主任さんの方も、こっちのこと理解してくれてるみたいだし、安心というか……」
「でも、言葉にしてみて解ったけど、僕、主任さんに無茶苦茶いろいろ頼ってるよな……。仕事とか、メンタルの部分とか」
「…………」
「でもホントに、主任さんが夢に出てくるのは何となく解るけど、じゃあ、何のためなんだろう……。夢に意味を求めちゃ駄目だと思うんだけどね」
●いつの間にか
《――何かアンタ、後輩君に告白みたいなこと言われてなかった? ワーイ、アイツトコイツガクッツイチャーウ》
「いやいやいや、上司と部下の会話! そういう内容! というか小学生か!」
《でもアンタ、頼られるの無茶苦茶弱いというか、好きだよね》
「…………」
「……否定はしないなあ。だから今の仕事やってるんだし」
「……って、何でアンタがここにいるの?」
《いや、もう既に夢の中だよ? アンタ、帰ってきてベッドに寝転がってそのまま寝てる》
「そうなんだ。床寝じゃなくて良かった……」
《いやいやいや、そういう問題じゃないだろ》
「――って、"来た"? これ、そうだよね?」
《私がいるっていうことは、そういうことだよ? 後輩君の夢と繋がってて、今、■■大解放の中にいる》
「えっと、じゃあ、後輩君は?」
《ああ、焦ってるね? いい傾向。――手を引いてたアンタとはぐれてしまってるからね》
「ソレって、駄目じゃないの! 早く手を引いて前を向かせないと」
《だーかーら、いつもこういうスタートなんだよ。それで強引に前を向かせるの。でも今回は、ちょっと遅れてるから頑張って》
「え? 頑張ってって?」
《アンタに任せてみるわ。――場所はすぐ繋げるから心配しないで》
●夢の中
「……?」
「……あれ? お姉ちゃんは?」
「ええと、あの、お姉ちゃん?」
「…………」
「うわ、や、やだ、お姉ちゃん! ええと、どこに居るの!?」
「そっち?」
「それとも――」
「――こっち向いたら駄目!!」
●間に合って
「良かった……。あのね君? こっちを見ないって、そう、約束したよね?」
「あ、うん。御免なさい。……でも、お姉ちゃんが何処にいるのか解らなくて」
「うん。遅れて御免ね。でも、憶えておいて。――お姉ちゃんは必ず来るから、君も、今みたいに後ろ振り向かない、って。あと、絶対にオバちゃんって言わないって」
「後半真顔だったよね今? ――でも、あの、もしも後ろ振り向いたら?」
「うん、そうなったら、もう、お姉ちゃんと会えないかもしれないからね?」
「……それは、嫌」
●ちょっと一息
「…………」
「……御免、今、ちょっとズキュンって来た」
《アンタ思い切り不謹慎だけど、まあ、うん、そういう性分だよね私達……》
●そして約束する
「もう、こっちを見ないって、忘れたら駄目だよ?」
「うん。約束する」
「約束かあ……。随分重いなあ、って思うけど、でも、夢の中だもんね」
「じゃあ、私も約束するね。――君が悪い夢を見ないように、そうなれるまで、傍にいてあげるから」
「うん。……約束ね」
「眠い? 眠っていいよ? さっき、怖かっただろうし、眠るまでこうしててあげる」
●安堵の時間
「…………」
「……う・わー……」
「……久しぶりに飛び起きないと思ったら、何て夢見てるんだ僕。でもあれ、何だろう? 子供の頃かな? 憶えが無いな……。というかあれは何というか……」
「凄く怖い不安から、主任さんに守って貰った気がする」
「夢診断みたいなことを言うなら、……僕は、悪夢を見ないようにするために、主任さんを頼ってる、ってことになるのかな……?」
「…………」
「あ、あまり深く考えないようにしよう。主任さんに申し訳無いというか……」
●会議の時間
《…………》
《……何か、ビミョーに正解に近い処に辿り着いてる?》
「え? 何が?」
《いや、うちの大家》
「? どういうこと?」
《いやまあ、何だ? アンタちゃんと出来るみたいで安心したけどさあ》
《”約束”って、アンタ。何勝手にしてんのよ?》
「いや、後輩君が自分から約束したじゃない? じゃあ、こっちだって、ほら、返さないと」
《その”約束”、アンタが居ないとき、誰がすると思ってんのかな?》
「つーかアンタ、私の一部でしょうが! ハイ、私が居ないときはちゃんと仕事する! いいね!?」
《クッソ! もう、夢の方、ガンガン繋げてやっからね!? 憶えとけ!》