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プロローグはこちら https://www.pixiv.net/fanbox/creator/355065/post/418529

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破滅願望   原作:M月  イラスト:朝凪  制作:fatalpulse

15話 「就任」

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──王城内、玉座の間にて。

二つの玉座の片方に座っていた少女がゆっくりと立ち上がり、壇下へと歩を進めた。

少女は跪いている男の前にて立ち止まると、静かに男の名を告げる。

「バルガス・オルフェゴール」

「ハッ」

跪いた男が短く応える。

「……汝、我が剣として。……我が盾として。……我が身を守る騎士となることを、誓いますか」

「この身の全てを以って、姫様をお守りすることを誓います」

男は跪いたまま顔を上げ、少女から誓いの剣を受け取った。

誰もが口を閉ざして見守るその厳格な儀式の中、本来であればもっとも祝うべきはずであった少女の顔は、優れない。

「バルガス・オルフェゴール。貴殿を第二王女の近衛騎士として任命する」

玉座に腰をかけた国王が、そう高らかに宣言した。

「ハッ……謹んで拝命いたします」

再び顔を伏せた男は、恐らく私以外には誰にも気づかれずに、その口角を歪ませていた。

厳かに執り行われた式典の後、バルガスの近衛騎士就任を祝うパーティが開かれた。

城内関係者のうち、地位の高い人物は軒並み参加している。

いまだ城内に敵の多いバルガスの近衛騎士就任には、当然ながら多く反対の声が挙がった。

だが最近になって急激に勢力を伸ばしはじめた、オルフェゴール派閥と呼ばれる一派の力によって、半ば強引に今回の件は可決された。過去のバルガスの実績を鑑みれば、これは異常としか言いようがない。私の存在によって最近の第三騎士団の評判はすこぶる良好と言ってもよいのだが、それでも近衛騎士に抜擢するほどの功績ではない。ましてや近隣諸国との戦争もないこの平時に武勲が立てられたわけでも当然ない。にも関わらず反対の声を押しやって就任まで結びつけたのは、オルフェゴール派閥の発言力が尋常ではなかったからだ。

なにせ、大臣を筆頭とする重鎮が勢揃いしているのだ。反対派に為す術はなかった。当然、そこには私やセラの暗躍が噛んでいる。

「――やあ、バルガス殿。近衛騎士就任おめでとう。それから久しぶりだね、リア。元気にやっていたかい?」

「お父様……」

「チッ……貴様か」

賑やかなパーティの中、入れ替わり立ち替わりでやってきていた貴族たちの波が一段落した頃――朗らかに話しかけてきたのは、私の父、ユピテル・アズライトだった。

それだけで軽い怒りをあらわにするバルガスだったが、父はどこ吹く風で話し始める。

「はは、そう邪険にしないでくれ。僕としては、君への印象を大きく改めたところなんだ。どうやら僕は、君のことを誤解していたようだね」

王城魔術師は王直属の研究院という性質上、政治的権力はさほど強くないため父の他に参加している者はいない。私がこの場にいるのは、王城魔術師としてではなく、第二騎士団の副団長としてである。

本来であれば魔術師の代表は筆頭であるゲルウェンが参加しているはずなのだが、数日前に謎の急死を遂げたため、次席の父が筆頭代理として参加する運びとなったのだ。

「まさか君が近衛騎士に就任されるだなんて、思ってもみなかったよ。」

「……ふん、何が言いたい?」

「はじめは君を推している人物全員が弱みでも握られているのかとか、荒唐無稽なことを考えたりしたものだが――そうだ、他にも例えば、魔術で洗脳でもされているのか……とかね」

「――ほう、それはコイツを疑っているということか?」と私を顎でさすバルガス。

「まさか。疑っているわけじゃなく、リアならばやりかねないと思っただけだよ」と父は笑いながら肩をすくめる。

「それを疑っているというのだろうが」

「いやいや、冗談さ。……それに、念のため調べたが魔術的な痕跡はなかったからね。変な風には思っていないし素直に賞賛しているよ。近衛騎士に抜擢されるくらいだ。優秀な君になら娘を預けても良いかなと会心したところだ。」

「チッ……もともと預かりたくて預かったわけじゃないがな。」

「ああ、すまない。あのときは私も気が立っていてね。気に障ったのならば申し訳ない」

父とバルガスの会話は、あまり私の頭に入ってこなかった。

――セラとバルガスの痴態を一日中見せつけられた日から、約一週間。その間私は、ずっとご褒美を貰えることができずにいた。触ってすらもらえないのだ。毎日一回、バルガスに催促はしているが、全く相手にしてもらえない。そうするともう私にはなにも言えなくなる。下手に食い下がって、またバルガスの機嫌を損ねたらと思うと怖いからだ。

「はぁぁ……ッ」

騒然としているパーティ会場で、私は人知れず湿った溜息をついた。

(ああ……ちんぽ、ちんぽ…、ごしゅじんさまのちんぽ……)

ぼおっとしながら、そんな低俗な単語を何度も繰り返す。いくらなんでも私らしくないと自覚はしているのだが、そんなことを気にしていられないくらいに、身体がもう限界だった。つい無意識に、バルガスの股間の方に視線をもっていってしまう。頭の中は肉欲でいっぱいで、身体はずっと火照っている。

そんな私の様子に気がついたのか、父が心配そうに私に声をかけてきた。

「リア。顔色が悪いようだが、大丈夫かい?」

――正直なところ。父には悪いが、放っておいてほしかった。

私はお父様を見ようともせずに、軽く頷いて応える。ぼうっとしたまま、バルガスの股間から視線を逸らすことができずにいた。傍から見れば、ただ俯いているだけのように見えるだろうが。

(あぁ――ちんぽ、ちんぽ、おちんぽ、おちんぽ様……ッ!! ああ、舐めたいぃ……におい、嗅ぎたい……むしゃぶりつきたいッ……!!)

あまりに浅ましい煩悩の羅列だった。一つ、わかったことがある。人間は極限まで発情すると、知能が低下するらしい。今まさに、私自身がそれを証明していた。

「――リア。リア?」

呼びかけられていることに気づいて、ほんの少しだけ我に返る。だが子宮にくすぶる官能の炎は、いまだ消えずに私の身体を苛みつづけている。

「ごめんなさい、お父様……少しだけ、体調が優れないようです。でも、大丈夫ですので、今はどうか放っておいてください」

頭が全く回らない。父に対して失礼な言い方をしてしまった気がするが、普段であれば浮かんでくるフォローの言葉も今は全く思いつかなかった。

「……どうやら重体のようだ。こんな状態で娘を参加させたのかい、君は?」

父がバルガスに咎めるような口調でそう言った。――本当に、勘弁してほしい。父の余計な一言でバルガスの機嫌を損ねでもしたら、あとで私が罰せられることになるのだ。そしてそれは、今であれば高い確率で『お預けの延長』だろう。

「違います、お父様。私がどうしても参加したいと無理を言いました。ですからバルガス様に責はありません。それと、事情も知らずにそのような仰りようは失礼だと思います」

だから、ハッキリと父を非難した。苛立った――というのもあるが、それ以上にバルガスのご機嫌取りのためだ。親への反抗というものを余りしたことがなかった私からのその言葉には、さすがの父も少なからず驚いたようだ。……いや、というよりも私がバルガスを庇ったことに対する驚きのほうが大きいのだろうか。

今の私はバルガスの部下であるという理由が存在しているため不自然には思わないだろうが、私がバルガスを嫌っていたことは恐らく父も知っているだろう。そんな私の変化に、驚いているのかもしれない。

――だとしたら、私が数え切れないくらいこの男に抱かれて……しかも我を忘れるほどによがり狂い、淫らなおねだりをしていることを知ったら、一体どれほど驚くのだろう。

「あ――ああ、そうなのか。いや、すまなかった。――だが、リア。責任感が強いのは良いことだが、あまり無理をするのも……」

「ですから、気にしないでください。私はいつまでも子供ではありませ――はうッッ!?」

「……リア?」

「は、ぁぁぁん……ッ♡」

突如奇声をあげたばかりか、直後に小刻みに震えだした私を訝しむ父。誤魔化そうにも、私はそれ以上喋ることができなくなってしまっていた。

愉快げに嗤うバルガスの片手が、私のお尻を掴んでいたからだ。突然の不意打ちに、掴まれたお尻からものすごい勢いで快感がせり上がってくる。倒れ込まないように、机に両手をついてただ立っていることが精一杯だった。

お父様からは見えない角度だし、主役席のため後ろには誰もいないのだが、それでも絶対に気付かれないとは言い切れない。なのにバルガスは、声を発しないように必死に堪える私をあざ笑うかのように、容赦なく私のお尻を揉み回す。

「ふん。体調管理くらいしっかりしておけ、愚図が」

「……はッ……はぃぃッ……♡」

上も下も薄手のドレスに体のラインを出すために下着を着けていない。

まるで直に揉まれているかのような無遠慮な刺激に、夜の情事かと勘違いした浅ましい子宮が期待に鼓動し急に伸縮する。

ぐに、ぐにい、と揉まれる度に、じゅんと太腿の間が熱く潤んでいく。さすがに場が場なだけに止めるべきなのだが、できなかった。一週間ぶりに触ってもらえたせいで、身体と心が歓喜してしまっている。罵られているのに素直に返答する私を父が訝しげに見ていたが、この状態でフォローできようはずもない。

(あぁぁぁ……気持ちいいよぉぉぉ……ッ♡)

耐えるために必死に力を入れているせいで、眉が苦悩に歪む。だというのに、口元は大きく悦びに緩んでしまった。

グニグニとお尻を揉まれている。今までされたことに比べれば鼻で笑ってしまうくらいに些細な刺激だというのに、私の身体はとても喜んでいた。久しぶりの、男からの愛撫である。

「……はぁああん……ッ♡ ……あっ……!?」

快感に耐えるしかなく俯いていると、二つの突起が視界に入った。

露出度の高めな、シルク製の真紅のドレス。その胸の膨らみの中央で、誰がどう見てもわかってしまうくらいに乳首が勃起しきっていた。下着を着用していないせいで、ハッキリと浮き上がってしまっている。

「…………ッ!」

激しい羞恥に襲われる。下着をつけていないだけでなく、ドレス自体の生地が薄いせいもあるだろう。だが、まさかこんなにもハッキリと浮かび上がってしまうなんて。しかも、事態はそれだけでは済まなかった。――股間から、つうっと何かが滴り落ちる感触が伝わってきたのだ。私は慌てて内股を閉じて、垂れてきた液体を太腿で挟みこんで止めた。だが、そのつけ根はいまだ熱く潤んでおり、このままでは次々とあらたな蜜がこぼれてきてしまうだろう。なのに、バルガスの手は止まってくれない。

「あ、うはぁああ……ッ!」

ブルブルッと武者震いのように身体が震えた。

「やっぱり大丈夫じゃなさそうだね。すぐに休んだほうがいい」

父が心配そうに声をかけてくれた。バルガスはバレることを恐れてもいないのか、いまだに私のお尻をグニグニと揉んでいる。

「は、はぅ、バ、バルガス様ぁ……っ♡」

だめだ、こんな甘ったるい声を出しちゃいけない――!

いくらなんでも気付かれると思ったのだが、しっとりと全身で汗をかき、顔を紅潮させて喘ぐその様は、皮肉にも父には病人のソレと映ったらしい。

「もう式典自体は終わっている。休ませても問題ないだろう?」

バルガスの命令がないと下がれないと判断したのだろうか、父は見当外れの確認をとった。

「ククク……ああ、そうだな。体調管理もロクにできていない不始末は後日叱ってやる。鬱陶しいからとっとと部屋に戻って休んでいろ」

「は、はっ……♡ も、申し訳、ありません……そうさせて、頂きます……」

同行するという父の提案を断って、私は言われたとおりにバルガスの部屋に向かった。

――それから、数時間が経っただろうか。いまだ身体の火照りはさめずに昂り、全身が疼いている。

こんな状況でも私はなぜ自慰禁止の命令を守っているのか、自分のあまりの惨めさにマゾとは言え涙が零れそうだった。

「はぁ、はぁ……ッ」

テーブルに突っ伏して休んでいると、ガチャリと扉が開く音がした。

「あ……」

私は慌てて立ち上がると、バルガスに向き直った。

「お、お帰りなさい――」

「ふん――」

やけに、遠くからバルガスの声が聞こえた。いや、実質的な距離は近いはずだが、頭がぼうっとしすぎているせいか別世界のように感じる。

「自分の部屋に戻れと言ったつもりだったが」

「え、あっ……ご、ごめんなさい……」

あんなことをされたのだから、今日こそは今までお預けされたぶんまで滅茶苦茶に犯してもらえると――そう期待してしまったのだが、どうやら勘違いだったらしい。内心では相当に落胆した私だったが、下手に食い下がりでもして機嫌を損ねるような真似は絶対にしてはいけない。

慌ててこの場を後にしようとする私の腕を――バルガスが掴んだ。

「まあ、待て」

それだけで、ドキっと鼓動が強く跳ねた。呼び止められただけで、まだご褒美をもらえるのかどうかはわからない。なのに私の身体は、期待でかすかに震えはじめた。

「……その衣装、なかなか上等なドレスのようだな」

「――え? あ、ええ。少し前に、お母様から頂いたドレスだから……」

――ドクン。

「ほう、成るほど悪くはない。……だが、雌豚が着るようなものではないな」

「あ……」

「脱げ」

「……ッ!」

脱げ、の一言で驚くくらいに胸が切なく締め付けられた。ドレスを褒められた事より命令された事のほうが堪らなく嬉しかった。次第に鼓動の音が大きくなっていく。股間が熱く潤みだしていくのを感じる。

(ああ……わ、わたし……こ、こんなッ)

――なんて、単純なのか。

もともと発情してしまっていたが、『脱げ』と言われた瞬間、バツンとスイッチが降りた。別世界のようだった知覚が、一気に現実へと成り代わる。直前までの、ただ劣情を催していた状態とは違う。今私の肉体は、あっという間に男を受け入れる準備を完了させた。ただ雄に突かれるために。子宮が降りきっているのが、わかる。

――今、おもいきり、むちゃくちゃに突かれたら、どれだけ気持ちがいいだろうか。

「ふ、くぅ……」

「喜べよ、貴様にピッタリの衣装を用意してやった」

言われるがままに全裸になった私に、バルガスが衣服を投げてよこした。見れば、よく見慣れたメイド服である。セラを含む、王城に住まう侍女は、皆この衣装を着て仕事をしているのだ。

それを見て、ある意味で拍子抜けしてしまった。私にピッタリの――などと言われたから、もっと際どいものを着させられるのではないかと身構えていたのだ。

とはいえ、それはあくまで見慣れているだけで、少なくとも本来貴族の私が着るべき衣装ではないのも確かだった。

否、正確に表現するのであれば下女のための服である以上、貴族が決して着てはいけない服といってもいい。

「なんだ、不服か?」

「……いいえ」

だがもはや、そんなものは抑止力にはならなかった。

痴女が着るような服かと想像してしまったくらいだ。それに比べればこの程度、どうでもいい。

着てみると、たしかにピッタリだった。バルガスの雌豚になってからさらに大きくなった私の巨乳…爆乳といってもいいサイズは既製品のメイド服では収まらないだろう。

ましてや身長も小さい私にもピッタリ合わせてある。セラからサイズを聞いてオーダーメイドをしたに違いない。

生まれて初めてのメイド服を抵抗なく身にまとった私を見て、バルガスが愉快げに言った。

「くくく……やはり、貴様のような雌豚にはよく似合っているぞ。そもそも、女に上等な服など必要ないのだからな」

「……」


相変わらずの女性蔑視極まりない発言をしながら、嗤う。見下した目で見られただけで、身体が熱くなってしまう。私自身に元から素養があったとはいえ、それ以上に、今ではそういう風に肉体が調教されてしまっているのだ。

こんな男に骨抜きにされ、あまつさえ貴族の身で侍女服なんてものを着させられている。しかも、私を下女に堕とすためのだけのオーダーメイド。それは私に、この上ない極上の興奮を呼び起こす。

「こっちにこい」

潤んだ瞳で息を荒げていると、不意に抱き寄せられた。

「え……ッ?」

――ドクン、ドクンッ!!

これまで一度もされたことのない行為に、一瞬、何が起きたのか理解できない。

だが――身体は瞬時に反応した。

「はうっ……♡」

不意に男性に強く抱きしめられて、高鳴る鼓動――なんて、甘ったるい反応じゃあ断じてない。

急接近したことで、よく知ったバルガスの体臭が鼻をくすぐる。ぶわっと鳥肌が立つような感覚に襲われた。

全身が発情し、力がまるで入らなくなっていく。膝が笑い、崩れ落ちそうになるが、強く抱きしめられているせいで倒れることもかなわない。

「あ、あ、あぁぁ……」

身体が小刻みに震えている。トロンと目が落ちていく。意識しているわけでもないのに、自然と身体がこういう反応をする。私はもう、欲しくて欲しくてたまらなくなっていた。更にそういう反応をしてしまう自分――二つの興奮が、相乗効果でグルグルと私を昂ぶらせていく。

「くく……よほど、堪えているようだな」

「あ、あぅ……あ……」

無意識にパクパクと口を開閉して、バルガスを見上げる。涙のせいか、視界が滲んでいる。

ああ、きっと今の私は、女としかいえない顔をしているのだろう。

「久しぶりに、抱いてやろうか」

「えッ……!!」

バグン! と、胸が大きく跳ねた。

「は、はひぃ……嬉しいですっ……!! ご褒美くださいぃぃッ!!」

脳内麻薬がジュクジュクと分泌されている。

私はもう、この男から抜け出すことはできない。さながら食虫植物に捕食された虫のように、全身を少しずつ溶かされて、ビクビク震えながら最期の時を待つ――それが、今の私なのだ。

抱いてやると言われた瞬間に全身を襲った幸福感。しかも、犯されているときに味わえる快楽はこんなものじゃない。この世の何と比較しても全てが下らないゴミと化すであろうほどの、極楽。それを一か月ぶりに、また味わえるのだ。

「はッ、はッ、はッ……♡」

……私の身体は、耐えられるだろうか?

無理に決まってる。何度も何度もイカされた挙句、失神するだろう。でも子宮を乱暴に突かれてまた無理やり覚醒させられて、すぐにイカされ、また失神。その繰り返し。予想と呼ぶには確実すぎる未来である。

そんな未来を思い浮かべて、だらしなくもいやらしく破顔してしまっている私に――

「ククク……だが、だめだ。もう暫くは罰を与える」

――そんな非常な宣告が叩きつけられた。

「……ッッ!」

私はもう、駆け引きができる状態ではないのだ。

言われたことに一喜一憂して、それが嘘かもしれないとか、どうすればご褒美がもらえるのかとか、そんなことすらまともに思考することすらできなくなっている。言ってみれば獣と一緒だ。

ここまで頭がまわらないのは、さすがに一か月も禁欲させられているからではあるだろう。一度思い切り抱いてもらえれば、少なくとも人間には戻れるはずだ。

でもそれは、あくまで抱いてもらえればの話である。逆に言えば私はもう、定期的にこの男に抱いてもらわないと、人間としての生活を送るのが困難なほどに、壊れてしまっている――いや、完成してしまっている。

この男に全てを捧げ、この男がいなくては生きていけないほどに依存して。そしてそれをこの上なく嬉しいと思ってしまっている――そんな、完成した性奴隷。

「ふぐ、うぅ、うぅぅぅぅ……あああああ…………ッ!」

私の生きがいは、バルガスに抱かれること。そういう風に身体が作り変えられている。

それなのにこれ以上まだイジメられるのかと思うと、溢れでる涙をこらえることができなかった。

「……ク、ククク……」

無情に響くバルガスの笑い声。――だが、その声は私に向けられた嗤いではなかった。

「ククククク……とうとう、近衛騎士にまで昇りつめたぞ……ふははははッ……!」

「……う、うぅぅぅ……」

すすり泣く私をよそに、バルガスは珍しく興奮した様子で話し続ける。

「フン、辛気臭い面を見せるな。心配せずとも――今調教している女に飽きたら、すぐにまた情けをくれてやる。今回の罰で貴様も懲りただろうからな」

「あ……」

懲りたどころではない。もう二度と、たとえ些細なことであっても逆らう気はなかった。

「くくくく……本当に貴様は、この俺の役に立つ女だ……あらゆる意味でな」

「……え?」

――ドクンッ!!

「女など所詮、男の性欲処理しか役目はない。だがリア、貴様の価値だけは認めてやっている。今回のことは、よくやった」

「え、あ……は、はひっ……」

急にそんなことを言われて驚いたからか、バグンバグンと熱く心臓がときめいていた。

まさかこの男に面と向かって褒められるだなんて思っていなかった。ただ、それ以上に身体の反応が理解できなかった。落胆によって一瞬で冷めさせられていた身体が再び、カァっと熱く滾っている。

「貴様は見た目も悪くないからな。この俺の性奴隷に相応しい女だ」

「あ、うう、さ、さっきから、なにを……」

たとえ言葉だけでも、官能を刺激されれば身体が発情してしまうのは理解できる。性的快楽に陶酔することが私の望むことであるし、これまでもずっとそうして調教され続けてきたからだ。

だが、単純に私の容姿や能力を褒められて身体が悦ぶ、というのは解せなかった。私にとって私が優れているのはただの事実であり、なんら驚くことでもない。今だって褒められているだけで、実際のご褒美は後という話をされているのだ。それは落胆こそすれ、悦ぶ場面では決して無い。

「――いいか、これから俺の部屋では、他の端女たちと同じようにそのメイド服を着用しろ」

「……え、あ……は、はい……ッ」

コロコロと話題が変わる。思考の回転が鈍くなっているせいで、何が言いたいのかよくわからなかった。

ただ、なぜだか、顔が熱い。

「ククク……ああ、だからといって、他の端女どものように、飽きたら解放されるなどと思うなよ? 貴様は一生この俺の奴隷だ。いいか、貴様は今後、俺のためだけに生き、俺のためだけにその能力を使うのだ……それを理解できたら、近いうちにまた褒美をくれてやる」

「……あ、は、はい……ッ! あ、ああああ……ッ!❤」

――シャアアア……。

ふと、水が流れる音が耳に届く。それが自分の粗相であると気付くのに、数秒ほど要した。

「あ、え……? あ、あうぅッ……」

身体がブルブルッと震えたかと思うと、股間から太腿に熱いものが伝って、床とニーソックスをビチョビチョに濡らしていく。

「チッ……」

舌打ちと共に、私の身体がバルガスの腕から解放され、途端に腰が抜けたようにその場にヘナヘナと崩れ落ちた。

ビシャっと、水たまりにお尻がついた。

(……わ、私――も、漏らした、の?)

それも愛液や潮ではなく、小水、おしっこだ。漏らしてしまうという経験自体はバルガスのせいで、正直数え切れないほどある。でもそれはさんざん犯されたあとのことで、こんな風に言葉ひとつで漏らしてしまうなんていうことは初めてだった。なぜだか、身体が心地よい快感に包まれている。

(……あ、そういえばせっかく頂いた服、いきなり汚しちゃった……)

「おい」

頭上から聞こえたバルガスの言葉で、ハッと頭を上げかけた私は、しかしすぐさま下げることとなった。頭を足蹴にされて、無理やり床に額をこすりつけられたのだ。

「何をしている。貴様の粗相だろう、とっとと綺麗にしろ」

「は、はいぃッ……!」

若干不機嫌そうになった声色に、私はあわててペロペロと自分が垂れ流した液体を舐め取っていく。

その行為に、私の脳と身体がもっと媚びろと疼き、悦びはじめた。

――それは直前まで感じていた不思議な興奮と違い、従来通りの強い屈辱と快楽の味に違いなくて。

(……よかった、いつも通りね……♡)

さんざん焦らされたせいか、変に気張ってしまっていたのかもしれない。

私は少し安堵しながら、垂れ流してしまった液体を舐めとっていく。

――鼓動の音は、いつまでもうるさく鳴り響いていた。

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