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「うふふ……」  薄く嗤ってエレーヌの顔を覗き込んでから、アニカが壁にいくつか設えられていたハンドルのひとつを回した。  同時に晒し拘束具に囚われたまま、エレーヌの身体が持ち上げられていく。  そして、アニカを見下ろす高さ――口枷ネックコルセットで首を固定され、実際は見下ろすことはできないが――まで持ち上げられたところで、憎き裏切り者がエレーヌの前に戻ってきた。  確認することはできないが、彼女の顔はおそらく、露出させられたお股の正面。  膝で折りたたまれた脚を緩く開いて固定されているため、女の一番大切な場所もよく見えているはずだ。  そう考え、動けない身を羞恥に震わせると、アニカがいやらしく嗤って口を開いた。 「くくく……綺麗な色ね。自分で弄ったこともないの?」  あたりまえだ。他人に触らせたこともないし、身体を清めるとき以外、自分でも触れたことはない。 「よかったわね、初めて弄るのが私で」 「んむ(なに)ッ!?」  言われて思わず問い返したところで、なにかがお股に触れた。  顔がわずかに上を向く状態で首を固定されて見ることはできないが、おそらくそれはアニカの手だ。  王国を裏切り、敵に売った女に触られて、なにがよかったというのか。  身じろぎすらできないまま憤慨するエレーヌに、アニカが言葉をかけた。 「初めての娘でも、後宮付き宮廷魔導士の私なら、気持ちよくさせてあげられるから」 「んむ(なに)? んぅんんむぅう(気持ちよくなる)?」  信じられなかった。  騎士たる自分が、憎むべき裏切り者に秘所を弄られて気持ちよくなるなんて。  だが、アニカの考えは違った。 「後宮には、側室や愛妾の候補として、さまざまな娘が来るわ。まったく経験のない子、恋人と引き離されて無理やり連れてこられた子……どんな娘でも、寵愛を受ければ性的に昂ぶり、高貴な殿方……ときには淑女を悦ばせるようにするのが、後宮付き宮廷魔導士の役目」  つまり、望まない女でも、意思にかかわらず性的に開発するのがアニカの仕事というわけだ。  その言葉もまた、後宮の実態を知らなかったエレーヌには、にわかには信じられないものだった。  そしてそのあいだにも、アニカの指はエレーヌのお股をさすり続けていた。  清楚な割れめに沿って回りの肉を、触れるか触れないかの強さでゆっくりと。 (こ、こんなものは……)  くすぐったいだけだ。性的な昂ぶりにはほど遠い。  エレーヌがそう考えたところで、アニカが口を開いた。 「女の子の場所が、ヒクヒクしてるわ。くすぐったいのね?」  そうだ、そのとおりだ。だが、それだけだ。 「よかったわ。くすぐったくて」 「んぅ(えっ)……?」  意外な言葉に声をあげると、アニカがもう一方の手で、太ももの裏にくっつく足裏に触れた。 「足の裏とか、脇とか、首すじとか、人体にはくすぐったくなりやすい場所があるでしょう? そこって、性的な意味で感じやすい場所でもあるの。つまり、くすぐったさは快感と表裏一体。くすぐったくなるということは、淫らに感じ始めているということなのよ」  そしてそう言うと、足の裏から手を離して、再び媚肉回りの愛撫に集中した。 (ほんとうに……)  そうなのだろうか。  性体験はおろか、同期の噂話程度の性の知識しかないエレーヌにはわからない。  アニカの言葉は、後宮付き宮廷魔導士だからこそ知りえた事実なのか。それとも、謀《たばか》るための嘘なのか。経験と知識に乏しいエレーヌには判断できない。 「もしかして、私が嘘をついていると思ってる? 残念、ほんとうのことよ。その証拠に、くすぐったいだけじゃない感覚が、お股に生まれていない?」 「……ッ!?」  言われて初めて、くすぐったさの奥に、ゾクゾクとした妖しい感覚が生まれていることに気づいた。  それは、破瓜の瞬間《とき》から性的に高まるよう、数多の処女の肉体を躾けてきた後宮付き宮廷魔導士の手練手管によるものだった。  手慣れた手つきで、絶妙な力加減で媚肉回りを撫でながら、くすぐったさを生みつつ、そこに触れられることに馴らす。  そのうえで、くすぐったさは快感と表裏一体と告げることで、エレーヌに『そうかもしれない』と思わせる。  くすぐったさのなかに妖しい感覚が生まれてくるのは、人体の仕組み上、オンナなら誰にも起こりうること。  言葉を完全に信じていなくても、疑心暗鬼になりさえすれば、あとは導くだけで性の快感を自覚する。  肉体の生理的な反応と精神の動きをも利用しながら、アニカは巧みにエレーヌを誘導する。  そしてオンナの生理的な反応は、感覚のみならず目に見える現象をも引き起こした。 「うふふ……あなたのここ、しっとりと潤い始めたわよ」  大切な場所の粘膜を、摩擦から守るための生理現象をも、狡猾なアニカは利用する。 「ねえ、エレーヌ、期待しているのね?」  違う。だが、言葉を奪われて否定できない。 「もっといやらしく、ここを弄ってほしいのね?」  それも違う。しかし、喋れないから拒否できない。 「こんなに気持ちよさそうに濡らしているんだもの。弄ってほしくないわけがないわ」  そう決めつけて、否定も拒否もできないエレーヌの割れめそのものに、アニカの指が触れた。 「ンうッ!?」  思わず声をあげたのは、大切な場所に直接触れられ驚いたから。  とはいえ、アニカの手つきは変わらない。 「あなたが今覚えているのは、小さな性の快感。正確には、もっと大きくなったら性の快感になる、快楽の予兆のような感覚」  耳の中に直接声を届ける魔法耳栓ごしの声で、そうなのだとエレーヌに刷り込みながら。相変わらずの力加減で、ゆっくりと、じっくりと、快楽の泉を絶妙に弄り続ける。  その行為が、エレーヌの処女地を開発していく。  わずかずつ、少しずつ、快楽の予兆たる妖しい感覚が大きくなっていく。そこが吐き出す蜜の量も増えていく。  とはいえ、この時点でのアニカの目的は、エレーヌを感じさせ性的に昂ぶらせることではなかった。  みじめな文字が書かれたプレートつきシャックルピアスを乳首に着けたのと同じように、さらなる残酷な処置をエレーヌの肉体に施すことが、裏切り者の後宮付き宮廷魔導士の目下の目標なのだ。 「うふふ……」  薄く嗤い、アニカがそのための装具を手に取る。  エレーヌからは見えない媚肉の割れめに、それを擦りつける。 「ん、んむむ(やめろ)ッ!」  処女地への挿入を予感し、エレーヌはうめくが、アニカの狙いはそこではなかった。 「ここに挿入すると思ってる? 違うわよ。小指より細いこれじゃ、エレーヌのようないやらしい子は満足できないでしょう?」  言われた直後、異物は移動。  濡れそぼつ媚肉に擦りつけられていたそれが、女の子の入り口の直上の小さい穴に押し当てられた。 「……ッ!?」  驚いて声をあげかけた刹那、異物が尿道口に挿入された。 「ふふ、場所を間違えたわけじゃないわよ。これは尿道に挿入するため、自在に曲がるよう蛇腹状に作られた金属管」  アニカが告げるあいだに、管が尿道の中をヌルリヌルリと進む。  エレーヌ自身の蜜で潤滑されているうえ、痛覚を遮断する魔法をかけられているから、痛みはまったく感じない。  だが、これまで生きてきたなかで、身体の内から外へ液体が通るだけだった器官を、異物が逆に通過していく感覚はしっかりとある。 「ン(あ)、ン(あ)、ン(あ)……」  その異様な感触に、くぐもってうめく。  だが、どうすることもできない。拒否の意思を伝えることも、逃れるための身じろぎすらできず、ただ異物を体内に受け入れるしかない。  そして、ようやく管の侵入が止まったところで、アニカが次の装具を手に取った。  それがなんなのか、目にすることができないのは、尿道の菅のときと同じ。 「いよいよ、晒し拘束具最後の部材。お待ちかねのディルドつき股間装具よ」  アニカが不穏な言葉を口にすると、今度は媚肉に硬い異物が押し当てられた。  ズルリ、と異物が入り口をこじ開けたのは、その直後。 「……ッ!?」  反射的に目を剥いたが、痛覚を遮断する魔法のせいで、破瓜の痛みは襲ってこなかった。  代わりに覚えたのは、潤いきった粘膜から生まれる妖しい感覚。  それは、媚肉をさすられているときと同じ種類の、でももっと大きい感触だった。 「ン(あ)、ン(あ)、ン(あ)……」  尿道のときと同じようにうめきながら、肉の壺に異物を受け入れる。 「うふふ……ディルドごしに、処女ならではの硬い感触が伝わってくるわ」  いやらしく告げられた言葉に、反応を示す余裕はない。 「ン(あ)、ン(あ)、ン(あ)……」  それが侵入してくるにつれ、異様な感触のなかに妖しい感覚が生まれ続けるのは、痛みがないからだろう。 「日常的に激しい運動をしている女騎士は破瓜の証がないと聞くけれど、あなたもそうみたいね」  その出血のみならず、噂に聞いていた激しい痛みがないから、オンナの本能がもたらす性の快感につながる感覚がそこに――。  そこで、ハッとした。  憎き敵の手で膣に異物を挿入され、処女を奪われながら、騎士たる者が性の快感につながる感覚を覚えること自体が問題なのだ。  そのことを思い出し、気を引き締めようとしても、秘所からは妖しい感覚が生まれ続ける。  生まれる感覚が、エレーヌを蕩けさせようとする。 「ン(ク)、ぅう……」  口枷ネックコルセット越しにうめき、押し寄せる感覚に耐えていると、やがて異物の侵入が止まった。  とはいえ、妖しい感覚が止まるわけではない。  動きが止まっても、肉壺を圧倒的な存在感で占拠する異物――アニカによると、それはディルドという名称――は、今も快楽の予兆を生んでいる。  その間にも、アニカが股間でなにか作業をする気配。 『いよいよ、晒し拘束具最後の部材。お待ちかねのディルドつき股間装具よ』  ディルド挿入前のアニカの言葉を思い出し、股間装具が取りつけられたのだと理解する。  さらに、股間装具の穴から引きずり出された尿道の金属管につながれた柔らかい素材の管と、ネックコルセット一体の口枷から伸びる同じ素材の管を、乳房のあいだを通る棒状の部分に接続された。  直後、口中に生ぬるい液体が流れ込む。 (こ、この水は……?) 「もう口に流れてるかしら? それは尿道に挿入した菅から採取した、あなたのおしっこよ」」 「んぅう(まさか)……」 「味も匂いもしないから、嘘だと思ってる? でもね、おしっこに独特の匂いがあるのは、空気に触れるからなの。接続した管を経て晒し拘束具のコルセット部分に回収、外気に触れさせないまま口枷の管を経て口中に送り込んでいるから、匂いはしない。舌で感じないほど味が薄いなら、それはあなたが健康な証」 「んむぅ(そんな)……」 「晒し刑が始まれば、簡単には水分補給してあげられないからね。それにおしっこ垂れ流しの状態を衆目に曝すよりはましでしょう?」  そう言われても、納得することはできなかった。  騎士たる者におしっこを飲ませるなんて、理不尽すぎる。  そのうえ、エレーヌは処女を奪ったディルドをそのまま挿入固定され、乳首にはみじめなプレートつきシャックルピアスを――。  そこで、プレートに書かれた文字を思い出した。 『エレーヌ・マリオン 元は騎士だった性奴隷』  そうだ、これは性奴隷に対する処置だ。  真実か否かにかかわらず、王女付き近衛女騎士が性奴隷の身分に落ちたと王国民に知らしめることで、侵略者に対する反抗心を挫くための策なのだ。  あらためてそうと思い知らされ、愕然とするエレーヌから、アニカが離れた。  そして、再び壁のハンドルを回してエレーヌの晒し拘束具を元の高さに戻すと、裏切り者の後宮付き宮廷魔導士が目を細めて訊ねた。 「さて、これからふたりめの処置をするけれど、同期と後輩、どっちを先にしてほしい?」  晒し拘束具に囚われ、文字プレートつきシャックルピアスとディルドを固定する股間装具を着けられ、水分補給として自身のおしっこを飲まされるエレーヌの姿を初めて見たのは、同僚騎士のグラーナだった。  ネックコルセット一体の口枷で言葉を奪われ、答えられないエレーヌの回答を待たず、アニカはグラーナへの処置を始めると決めたのだ。  そして自分がどんな処置を受けるのか知らしめるために、グラーナにエレーヌの姿を見せた。  その惨状に目を見開いたグラーナと、一瞬視線が合った。  いたたまれず、お互いに目を逸らしたところで、エレーヌの乳首に吊られた金属製プレートの文字が見えたのだろう。  苦労も喜びも分かち合ってきた同期の騎士は、もう一度エレーヌの顔を見て、それからその目を絶望の色に染めた。  そんなグラーナへの処置を、エレーナは一番近くで見せられた。 『グラーナ・ナベル 元は騎士だった性奴隷』  みじめな文字が書かれたプレートつきシャックルピアスを着けられるさまも。尿道に金属管を挿入され、ディルドつき股間装具を嵌められる過程も。回収されたおしっこを飲まされてとまどうようすも。  すべてつぶさに見せつけられた。  それで自分が受けた処置の残酷さを、視覚からあらためて思い知らされ、折れかけていた心が、さらに深く傷つけられた。 (でも……それでも……)  アニカと彼女が施した処置に屈するわけにはいかない。  同じ処置を受けたグラーナ、そしてこれから受けるジルのためにも、自分は凛としていなくてはならない。  どんなみじめで憐れではしたなく、みっともない状態に陥っていても、精神は騎士のままでいなくてはならない。  たとえ王国民に、王女付き近衛女騎士エレーヌ・マリオンは性奴隷に落ちたと思われたとしても。  そう自分に言い聞かせ、完全に折れようとしていた心を奮い立たせながら、後輩騎士ジルへの処置も見せられる。  それから、アニカが呪文を詠唱。発動した睡眠魔法の効果により、エレーヌたちは再び眠らされた。  たとえこの身は虜囚と成り果てるとも、心までは屈しない。肉体は憐れでみじめな境遇となろうとも、精神は騎士らしく凛々しくあり続ける。  そう心に決めたのは、いつのことだったろう。  ほんの数刻前だった気もするし、ずいぶん昔のことだったようにも思える。  王宮前広場に設えられた晒し刑場に高く掲げらてから、どれほどの時間が経ったろう。  睡眠魔法が解かれたのはここに晒されてからなので、正確にはわからない。  広場には、大勢の民が詰めかけていた。  その大半が、みじめで憐れではしたなく、みっともない姿で晒された元王女付き近衛女騎士に、好奇な視線を向けていた。  そのなかには唇の端を吊り上げ、下卑た笑みを浮かべている者もいた。魔法耳栓のせいで聞こえないが、下品な声をかける者もいるに違いない。  王女付き近衛女騎士から、性奴隷に落ちた下賎な女として。  それは、つらい。  覚悟はしていたが、本当にこたえる。  加えて、魔法耳栓を通して耳の奥に直接伝えられたアニカの言葉。 「あなたたちに伝えなければならないことがあるの……」  あなた『たち』ということは、エレーヌのみならずグラーナやジルも、同じ言葉を聞かされていたのだろう。 「晒し刑が始まる少し前、アシケーヌからゾロメチル本国に、正式な通知が来たそうよ。あなたたちが命がけで彼の地に逃した王女と、残りの近衛女騎士の身柄を、私たちに引き渡すと」  はじめ、信じられなかった。  だがエレーヌは、王家と近衛騎士団を慕い敬っていた民が、落ちた女騎士を蔑むさまを見せられていた。  それは、自分たちの命と暮らしを守るためでもあるのだろう。支配者が王家からゾロメチルに代わったとしても、彼ら彼女らはこの地で生きていかなくてはならないのだから。  だとすれば、アシケーヌが命運尽きたクロアール王国を切り捨て、ゾロメチルと結ぶ道を選んだとしても不思議ではない。  王国の近衛女騎士として受け入れられるか否かは別として、そうした合従連衡が歴史のなかで繰り返されてきたことも、エレーヌは知っている。  ともあれ伝えられた衝撃の事実により、グラーナとジルのためにと奮い立たせたエレーヌの心は、再び折られようとしていた。  おまけに――。 「あともうひとつ、言い忘れていたことがあるの。あなたたちに挿入したディルド、魔法回路のしかけがあって……」  そこで、股間装具の金属板で固定された異物が、膣のなかで振動し始めた。 「……ッ!?」  突然の狼藉に驚き、目を剥いて声をあげる。  だが、声はくぐもったうめきにしかならない。 「……ッ!?」  オンナの一番感じやすいところへの刺激から逃れようと、反射的に身をよじる。  しかし、ピクリとも動けない。  その間にも、ディルドの振動は少しずつ強くなっていく。 「うふふ……もう始まってるのかしらね。ともあれ、晒し刑のつらさを紛らすための、私からの贈り物よ。ディルド内部の魔法回路に蓄えられた魔力が尽きるまで、存分に愉しんでね」 「ン、ンむむ(なにを)……ッ!?」  言っているのか。  大勢の民に好奇の視線を向けられ、一部の者には下卑た笑みを浮かべられ、下品な言葉を投げつける不心得者までいる状況で、愉しめるわけがない。  そもそも、騎士たる者が、人前でこのような辱めを受けて――。  しかし、もともと膣内に生まれていた妖しい感覚が、振動が強まるにつれ大きくなっていた。 (ダメだ、ダメだ、このままじゃ……)  快楽の予兆たる妖しい感覚が、ほんとうの快楽になってしまう。  ほんとうの快楽になり、酔わされ蕩けさせられてしまう。  酔わされ蕩けさせられ、あられもない痴態を曝してしまう。  性の快楽を味わった経験のないエレーヌだが、オンナの本能でそのことを予見していた。 (それは、それだけは……)  嫌だ。  もしそうなれば、乳首に吊られたプレートの文字だけでなく、ほんとうに淫らな性奴隷に堕ちてしまう。 (だから、だから……)  押し寄せる快楽に、耐えなければならない。  これ以上、自分がみじめにならないために。  そう考え、オンナの快楽の源泉を責められながら表情を引き締めてみせたエレーヌは、気づいていなかった。  民と高貴な主人を護るため、いかなる艱難辛苦《かんなんしんく》にも耐えるのが騎士。  自分のためだけに耐えようとするのは、ただのオンナ。  この時点ですでに、王女付き近衛女騎士だったエレーヌの精神は、一介の女虜囚のものに成り果てていた。  そして虜囚の女が、性奴隷として淫らに堕ちるまでの道のりは短い。 「ン、ぅ、ん……」  押し寄せる快楽に、くぐもってうめく。 「ンっ、ん、ん……」  うめきながら、押し寄せる快楽に抗おうとする。 「んぅ、ン、んッ……」  表情は凛々しく引き締めているが、挿入されたディルドとそれを固定する股間装具の隙間からは、媚肉が吐き出した蜜が溢れている。  快楽に肉がピクリと震え、乳首のシャックルピアスに吊られたプレートと分銅が揺れる。  それに、快楽に抗うことに必死のエレーヌは気づかない。  だが、集まった群衆のなかでも、前の方にいる者には見えている。  その者たちが、元騎士のただのオンナを、口々に囃したてる。  しかし、そのことも、アニカの声以外の音を奪われたエレーヌにはわからない。 「ンッ、んッ、んッ……」  押し寄せる快楽が、ますます大きくなってきた。 (ダメ、ダメ、このままじゃ……)  快楽に飲み込まれてしまう。  飲み込まれて、とんでもない痴態を曝してしまう。 (でも、でも、でもぉ……)  抑えられない。抗いきれない。 「ン、ン、んむうう(なにかが)……ッ!?」  来た。  そうしようと意識しないのに、身体が跳ねる。  しかし、みじろぎすら許さない晒し拘束具のせいで実際には跳ねることができず、フックで吊られた拘束具ごと揺れる。 「んむンう(なにコレ)……ッ!?」  絶頂である。経験がなく、知識も乏しいためそうと気づけない、性の頂である。 「ん(あ)、ん(あ)、んう(もう)……」  身も心も包み込むような大いなる悦びには、とうてい抗えそうにない。 「んぅ(あぁ)、んう(もう)、んぅんん(わたしは)……」  終わりだ。  かつて王女付き近衛女騎士だったただのオンナは、淫らな性奴隷に堕ちてしまう。  そのことを感じ取りながらも悦びを拒むことはできず、衆人環視のもと、エレーヌは止まらないディルドの振動に翻弄され続けた。 (了)

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