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あしたのジョー という作品を知っているだろうか?

50年経った今でも語り継がれる不滅のボクシング漫画だ。

私は心が鬱になった時などは、このあしたのジョーをよく見返す。今日は久しぶりの更新と共に、あしたのジョーを語る。


【あらすじ】

1960年代の東京のドヤ街(日雇い労働者の街)

飲んだくれていた丹下段平は、ヤクザとの抗争に拳一つで戦う若者と出会う。それが矢吹ジョーであった。元ボクサーで拳闘キチガイ(通称拳キチ)と呼ばれていた段平はジョーの拳に惚れ込み、ボクシングに勧誘する。しかしジョーは段平の情熱を利用し、小遣いをもらっては乱行、暴力沙汰の毎日。ついには警察に捕まってしまう。

鑑別所での生活が始まるが一通の手紙がジョーの元へ届く。それは「あしたのために」の書き出しで始まる段平からのボクシングの技術講義であった。暇を持て余していたジョーはそこに書かれていた通りの練習をする。すると自分のパンチが以前とは比べ物にならないほどキレが増しているのを実感し、本格的にボクシングの道を歩んでいく。


というのが簡単なあしたのジョーのあらすじである。

ここからジョーはライバルである力石徹やカーロスやホセとの戦いに身を投じていくのだが、私はむしろあしたのジョーの魅力は後半にあると思っている。無論、前半である力石徹との熾烈な戦いがあるのだが、前半は力石が主人公なんじゃないかというくらい壮絶なストーリーである。今回は割愛するが、私の語りたい後半を語ろう。


力石徹がジョーとの熾烈な戦いの末、リング上で亡くなるのはもはや伝説と言っていいほどの名シーンだ。あしたのジョーの後半は、いや、矢吹ジョーを主人公としたストリーはここから始まると言っても過言ではない。


その拳で結果的に力石を殺めてしまったジョーはトラウマから相手の顔面を殴ることのできない欠陥ボクサーとなってしまう。当然だ。というのは、家族も身寄りも無いジョーにとってはボクシングの苦しさも楽しさも分かち合えるのは友人でありライバルであった力石だけであった。唯一無二の友人を自分の手で殺してしまったのだから。

ジョーはショックから負け続ける。負けて負けて負けて…ついにはプロのボクサーがやるとは思えない野良試合までやるレベルにまで身を落とす。しかしジョーはボクシングをやり続ける。ボロボロになっても負け続けてもジョーはボクシングを止めないのである。その期間、漫画で言うと3巻分丸々ジョーは負け続ける。試合すらしてもらえない。泥の中で苦しみのたうち回るジョーの姿が3巻という長さにわたって描かれる。漫画を描いてる身だから言わせてもらうと、こんなのプロットの時点で編集に没を食らうレベルである。それくらい読者を楽しませる要素が無い。だが、これがすごく惹きつけられる。少なくとも私は頑張れジョー!立て!立つんだジョー!と泣きながら読んだ。


最終的にジョーはカーロスとの出会いでトラウマを克服する。それはやはりカーロスという圧倒的実力者相手だと無理でも顔面を殴らないと勝てないという必死さと、そこまで自分を本気にさせてくれるカーロスの実力、そして戦っている時のボクシングの楽しさからであった。

カーロスもジョーの実力を認め、後楽園での決戦は引き分けとなるが、二人の間に深い友情が築かれる。

しかしその後カーロスは世界王者のホセと対戦し、敗北を喫する。その時にホセの強烈なコークスクリューを浴びてしまい、パンチドランカーという脳障害を負って廃人同然となってしまう。

二人目の友人であったカーロスも失い、ジョーはショックを受ける。しかし自分も二人と同じように命を懸けて勝負をする境地に至りたいと決心をする。

そしてやってくる、世界王者のホセとジョーの最終対決。

ジョーは決戦前、ヒロインの一人である紀子に語る。


「そこいらの連中みたいにブスブスとくすぶりながら不完全燃焼しているんじゃない。ほんの瞬間にせよ眩しいほど真っ赤に燃え上がるんだ。そしてあとは真っ白な灰だけが残る。燃えカスなんか残りやしない。真っ白な灰だけだ。」


この時点でジョーも重度のパンチドランカー寸前に陥っており、ホセ戦はまさに死にに行くようなものでした。ホセの前に何度も何度も打ちのめされ、ダウンを取られるジョーだが、何度も何度も立ち上がり、ホセに向かっていく。そんなジョーを相手にホセも焦り、徐々に追い詰められていく。

最期は激しい殴り合いの応酬の末、判定に。


勝者は、ホセ


辛くも勝利を収めたホセだが、試合中に精神をすり減らし、顔は老け、髪は真っ白に染まっていた。


一方ジョーは、


「燃えたよ…真っ白に…燃え尽きた…真っ白な灰に…」


あの伝説のカットで「完」


これはただのボクシング漫画じゃなくて、ひとりの漢の生き様、哲学書みたいなものだと私は思っている。男泣きに泣きながら漫画を読んだのはこの作品くらいだけじゃないだろうか?


自分の生き方に迷っている人よ

自分の中に真っ白に燃え尽きるくらいの何かはあるか?

その炎はくすぶってないか?残ってないか?不完全燃焼になっていないか?

色々と問いただしてくれる作品だと、私は思った。

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