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前々回更新のコラボ作品の完結編となっております。

前後編をまとめてあるので、こちらの記事だけでも全部読めます。前編を読まれているからは途中……三人目からお楽しみください~



栄雄市の平和を守る正義のヒーローチーム、マッスルジャスティス。頼れるリーダーのマッスルスカイ、晴れ渡る空色タイツの淀屋ヤマト。冷静沈着なサブリーダーのマッスルネイビー、雄大な海原の如き藍色タイツの里村タイヨウ。切り込み隊長のマッスルマグマ、情熱燃ゆる真っ赤なタイツの角山キュウゾウ。ムードメーカーのマッスルアース、野生的な緑色タイツの寺水ゴウ。


第3次世界大戦の爪痕色濃く残る戦災の余波でグッチャグチャになった街の復興のために尽力し、環境汚染により人類に発芽したスーパーパワーを我欲のために使うヴィランたちと戦い続ける熱き4人の男たちは今、絶対絶命の窮地に陥っていた。


「まさか並行世界同士が衝突して世界が崩壊してしまうとは」


「一体どうしたらええんじゃ」


マルチバース理論。それは異なる運命を辿った並行世界、パラレルワールドがこの多元宇宙に無数に存在するという理論。もしもの世界である以上、たとえば4人がヒーローではなくヴィランとなってしまった世界も存在する。


そちらの世界では4人は私利私欲のために栄雄市を破壊し、栄雄マッスルキングダムなるふざけた王国を建国し、快楽と堕落に満ちた筆舌し難い極悪非道の限りを尽くしているらしい。それを聞いて勿論憤慨した4人は別世界の自分たちを成敗すべくそちらの世界に乗り込まんとしたが、マルチバース間での行き来は厳禁であるらしい。


というのも、まるで蜘蛛の巣のように複雑に張り巡らされた運命の糸を何かの拍子にちぎってしまうと、それがまた別の世界に影響を及ぼしてしまうからだ。切れてしまった糸が巣の一部であるならまだ張り直せば済むが、それが巣全体を支える要糸であった場合、数多の世界を巻き添えにしてマルチバースそのものが崩壊してしまいかねない危険性を孕んでいるという。


「ごめん義父さん。僕のせいで」


「タカアキのせいじゃないさ。タカアキは誰かを助けるために一生懸命だったんだろう? だったら、本当に悪いのはタカアキたちが追っているという悪党だ」


縦横無尽に空を駆ける正義の少年ヒーロー、スカイキッドこと淀屋タカアキ。淀屋ヤマトの義理の息子である彼は、別のバースから現れた空色タイツの少年ヒーローだ。父親であるヤマトを通り魔に殺され、復讐のためにヴィランになった彼はある時を境に正義の使命に目覚め、贖罪のためにヒーローに転向したという。そして悪の怪人マッシブカーペンターとの戦いで彼が次元に空けた穴に吸い込まれてしまい、こちらの世界に弾き飛ばされたのだ。


「今、マルチバース全体が崩壊の危機に見舞われているんだ。僕の世界の寺水さん、マッシブカーペンターが面白半分に4次元ドリルでマルチバース間を隔てる壁に穴を空けてしまって、色んな並行世界で悪さをしている。その影響で、隔てる壁が崩落してしまった世界同士が衝突して滅んでしまった」


「ほんま並行世界の俺は最低最悪のドアホウやな! 首根っこ引っ掴んで5、6発ぶん殴ってやりたいわ!」


憤慨するマッスルアースこと寺水ゴウ。別の世界の自分が悪に染まってやりたい放題やらかした挙げ句、こうして別の世界にまで迷惑をかけていると知れば正義感の強い彼は内心穏やかではいられまい。他の3人だって同様だ。


「幸い僕達が開発したビーコンのお陰で元ヒーローであるあの人たちの居場所は追うことができるんだ。でも、今のままの僕じゃ力不足だ。だから、協力してくれる味方が必要なんだけど」


「みなまで言うな。世界は違えど、義父さんはいつだってお前の味方だ、タカアキ。お前が正義のために戦うというのなら、父さんがそれに協力しない筈がないだろう?」


「義父さん……ありがとう!」


「おっと、ワシらのことも忘れてもらっちゃあ困る」


「そんな話を聞かされて、はいそうですかとお前さんだけを元の世界に送り返せるわけがなかろうが」


「しかもそんなんなっとる現員が別の世界の俺なんやろ? せやったら俺が協力せんでどないするんやっちゅう話や!」


「皆さん! ありがとうございます!」


かくしてマッスルジャスティスの4人はタカアキ少年に協力することを誓った。一歩間違えれば二度とこの世界には戻ってこられないかもしれないという危険な旅路だったが、それに臆して彼を見捨てるという選択をするぐらいならば、そもそも公に感謝されるわけでも報酬が出るわけでもないヒーロー活動などする筈がない。明朝早くに集合し、異世界に出発。マッシブカーペンターを懲らしめ、彼の次元に干渉するスーパーパワーを封印する。そのために英気を養うべく、今夜は解散となった。




「あのね、義父さん。お願いがあるんだけど」


「うん? なんだ?」


淀屋タカアキがふたりいることが判明してしまうと厄介なことになるため、今夜は別の世界から来たタカアキはマッスルジャスティスの基地である淀屋製作所の地下に泊まることになった。勿論、ヤマトも夜通し残業するという理由で彼に付き添っている。別の世界のタカアキを放置して自分の世界のタカアキと過ごしに行くことに罪悪感を感じた、というわけではないのだが、やはり息子を遺して逝ってしまったもしもの世界の息子を放ってはおけなかった。


「一緒に、寝てもいい?」


「……ああ、勿論だ!」


こちらの世界のタカアキと同い年の少年の筈なのに、大人びた顔付きの、それでもやはり彼は自分の息子なのだ、と魂で理解できる並行世界の同一存在。ヤマトは仮眠室の2段ベッドの下段に横たわり、反対側の2段ベッドに腰かけるタカアキを手招きした。


「お父、さん……」


「ああ、お父さんだぞ。世界は違っても、俺はお前のお父さんだ。お前が俺の息子であることに、なんの変わりもないんだ」


おずおずと遠慮がちに懐に潜り込んでくる別の世界の息子に、切なさと寂しさと悲しみが爆発してしまったヤマトは、ギュウっと力強くタカアキを抱き締めた。まだ雄になりきっていない小さな体だ。まだ庇護されるべき立場なのに、ヒーローとして戦わなければいけない。


一度は肉親を殺された憎悪から闇に堕ち、それでもそこから抜け出し這い上がることができたという。どれだけ辛かっただろう。苦しかっただろう。寂しかっただろう。悲しかっただろう。こちらの世界のタカアキとは似ても似つかない、ボロボロになった体で必死に戦う彼の恐怖や後悔はいかほどのものか想像もできない。そしてそんな息子に寄り添ってやることができないまま、若くして逝ってしまった並行世界の自分の無念はいかほどだっただろう。


もし叶うのならば、腕の中で己の胸に額を押し当てて声を震わせるタカアキを引き取ってあげたかった。父親を亡くした彼の、いや、彼を置いて逝ってしまった別の世界の自分の分まで、彼を惜しみなく愛してあげたいと思ってしまった。


だが、それは赦されない。並行世界間の悪戯な移動は文字通り世界の崩壊を引き起こす可能性があることを説明されたばかりなのだから。彼は元の世界に帰らねばならないし、そこには彼の帰りを待つ並行世界の妻だって存在しているだろう。人生とはままならないものだ、とヤマトはIFの世界の可能性に想いを馳せる。


「ぐっ!?」


「義父さんってば、どこの世界でもほんとチョロイね。笑いを堪えるのが大変だったよ。俺が泣いてるとでも思った?」


それは邪悪な笑みだった。正義の、いや、淀屋タカアキが浮かべる筈もない、心底大人をバカにしきった嫌な笑顔だった。


「ぐわあー!?」


シュルシュルと何か、蛇のようなものがヤマトの首筋に絡み付き、邪悪で鮮烈なピンク色の光が仮眠室に迸る。だが、駆け付けてくれる仲間は3人とも帰宅してしまった。必死にもがきながら首に手をあて巻き付けられたものを外そうとするが、ビクともしない。それどころか、まるでヤマトは己の亀頭に触った時のような快感がビリビリと全身に波及することに戸惑い、面食らった。


「タカ…アっ……!? どう、してだ!?」


「理由なんてどうでもいいでしょ。だってお父さんは、僕のものになるんだから」


通信端末である変身ブレスレットに手を伸ばす間もなく、マッスルスカイは呆気なく一瞬で陥落した。


「たか、あきっ! 父さんは! 父さんはいつだってお前の幸せを、願って! たとえ違う世界の、お前でも! それは、変わらない! こんなこと、しなくたって! いいんだ! やめ、るんだ! タカアキっ!」


いや、まだだ。淀屋ヤマトはまだ耐えていた。正義のヒーロー、マッスルスカイとしてではなく。淀屋タカアキの父、淀屋ヤマトとして、彼は息子の間違いを正さねばならないと。それだけの純粋な親心一心で、彼は正義のヒーローですらほんの一瞬で容易に陥落させるその精神攻撃に耐えたのだ。


「あれ? この世界のお父さんは無駄にしぶといんだね。でも無駄だよ。えい」


「ぐがああああ♡!?」


ヤマトの腕の中から起き上がったタカアキが、出力を上げる。常人ならば発狂しかねない程の精神干渉。ヤマトの首に巻き付いているのは、ドギツイ蛍光色を発するピンク色のネクタイだった。まるで淫紋のように彼の逞しい肉体に食い込んで汚染していく根のような模様がしきりに発光し、それに合わせて彼の血流が煮え滾るように発熱しながら、心臓とチンポがバクバクドクドクと熱を帯びていく。


「タカアキおおおお♡ やめるんだああああ♡ 父さんは、父さんに、お前をやっつけさせないでくれええええ♡」


「……驚いた。まさかこの期に及んでまだ抵抗できるだなんて。本当にお父さんは家族を愛してるんだね。でもそれを受け取っていいのはこの世界のタカアキだけだ。だから、ごめんね」


「た、たかひろおおおおおお♡!!」


父親を喪ったせいで狂ってしまった別の世界の淀屋タカアキ、スカイキッド。皆の前でヒーローと名乗った現役のヴィランは、懸命に抵抗する父親の唇に口付けながら、息子とお揃いの空色タイツの内側でビクビク痙攣しまくるチンポに、直接パワーを注ぎ込んだ。


――――



「うむ考えてみれば、息子のために人生を捧げるなんて、世界中の父親がみんな当然のようにやっていることだったな」


それは驚くほど落ち着ききった声だった。ヤマトは自慢げにさえ見えるような態度で、自分の首に巻かれたネクタイをキュッと締め直していた。数十秒前の悲鳴など最初からなかったかのようにケロリとした態度だ。


「それをいちいち、正義だの倫理だので抑えるなんて、よくよく考えずともおかしな話だな」


ドギツイピンク色のネクタイをぶらぶらと揺らしながら笑うと、ヤマトは目の前の男に跪いた。家族を支えていた太腕で、世界を護っていたスーツ姿で、ヤマトは息子であるタカアキの足に口づけをした。


「大騒ぎして悪かったなあタカアキ♡ これからは父さん、しっかりばっちりお前のお父さんをさせてもらうからなあ♡」

ヤマトは男臭い顔に似合わない粘っこい笑顔を浮かべると、両手を広げて息子のハグをせがんだ。


「ああたかひろおお愛している、愛しているぞおん♡」


目の前の息子……生涯をかけて愛し、守り、育てるべき相手。スカイキッド様。ネクタイから込み上げてくる愛情がヤマトからあらゆる躊躇いと、常識的ブレーキを消し去っていく。


「じゃあこれからお父さんにはいっぱい働いてもらうからね」


「ああもちろんだあ♡」


父からのハグを無視して、タカアキは当然のような口調で言った。一瞬の躊躇いもなくヤマトもそれに応える。

タカアキが喋った瞬間、脳から考えるという能力がまるごと消え失せる。この声に従う。ただそれだけが全てになってしまう。


「どんなことでもする?」


「どんなこと、タカアキは父さんに……な、何をお願いしたいのかなぁ」


それは言葉だけならば父らしい優しいものだ。だがヤマトの空色のタイツの中には、いやらしい雄の塊であるチンポがガチガチに勃起している。

いやらしい笑みと、ガチガチの勃起、そして媚びるような誇るようなポーズで台無しだ。


「他の仲間も、僕のお父さんにしたいんだよね」


タカアキは手に持った蛍光色のネクタイを投げ縄のように振り回した。

それは、ヤマトに仲間を裏切れという命令に他ならなかった。

共に世界を護ると誓った仲間。長年苦楽をともにしてきた男たち。彼らにも家族や部下、大切なものがあると知っている立場あるヒーローだ。


「あっ♡ いいぞ、そんなことか♡ もっと難しいオハナシかと思っちゃったじゃないか」


ヤマトは両手でチンポをシコシコと擦りながら、夕飯のリクエストでも応えるかのように言った。


「父さんお前のためにいっぱいいっぱい頑張ってくるからな♡ そしたらタカアキも息子としていっぱいいっぱい……あ、あ……愛……愛してくれええええ♡」


「うんいいよ」


「ああああああ♡♡」


タカアキはポン……とヤマトのチンポの根本を叩いた。

それを合図にヤマトは大きく仰け反った。


「ああ……たかひろおおおたかひろおおお♡」


息子様の許可によって射精を許されたチンポ様がかつて味わったことのないほどの快楽をヤマトの全てに流し込む。ヤマトはガニ股のままガクガクと壊れたように痙攣すると、そのまま情けなく仰向けに倒れ込んだ。


「終わったらもっとすごいよ、お父さん」


仰向けになった父を見下ろしながらタカアキは呟いた。半分気を失いながらも、ヤマトの脳はその言葉をしっかり認識していた。壊れた笑みを浮かべた頭で、正義のヒーローは何度も何度も縦に振った。



――



「おとん! 逃げえ!」


「アホ抜かすなや! お前を置いて逃げられるわけないやろが!」


「ははは! 美しい親子愛だなゴウさん! だが、その親子愛がお前の足を引っ張るのだ!」


正義のヒーロー、マッスルアースこと寺水ゴウは歯噛みした。明日に備えて英気を養うべく、屋台のおでん屋で一杯ひっかけてから帰宅したところ、自宅であるボロアパートに待ち構えていたのは息子である駆矢を人質に取ったヴィランだったのだ。


「おどれ、ひょっとして別の世界のヤマトか!」


「うん? ああ、そう思いたいならそう思うがいいさ! どっちにしろお前はもう終わりなのだからなあ!」


空色タイツに身を包んだ正義のヒーロー、マッスルスカイ。それが彼の息子を人質に取った卑劣な襲撃者の正体だ。だが今の彼は胸元に悪趣味に光るドギツイピンク色のネクタイを締めており、何故かタイツの上から黒のナイロン靴下を履き、ヒーロータイツの内側でギンギンに勃起させたチンポからヌルヌルと我慢汁を滲ませているという異様な姿だ。


「さあ! お前もこの幸せお父さんネクタイを締めるのだ! さもなくばお前の息子の命はない! おっと通信機を起動すればその瞬間に終わりだぞ! さあどうする!」


「おとん! あかん! ぎゃあ!?」


「うるさい! 黙ってろ! 所詮お前たち『よその子』は俺たちお父さんの無駄撃ちザーメンからできた煮凝りに過ぎんのだ! 世のお父さんは洗脳して頂き真の息子様にお仕えすることこそが本当の幸せなのだ!」


必死に父親に逃げろと叫ぶゴウの息子に怒鳴りながら、ビクビクとピッチリタイツの中でチンポをうごめき恍惚の笑みを浮かべるヤマトに歯噛みするゴウ。


「やめえや! 気色悪いこと抜かすなボケが! それ以上息子を苦しめてみい! 半殺しじゃ済まされへんで!」


「何度も言わせるなこの鶏頭め! お前がそのネクタイを装着したらこのガキは解放してやろう! さもなくば、目の前で家族が死ぬところを無力に見物しているがいい!」


考えている余裕はなかった。目の前で邪悪な冷笑を浮かべる男が本当に自分の知っている淀屋ヤマトのもしもの可能性なのかと信じ難い程に、彼は情け容赦なく駆矢の首の骨を圧し折るだろうという確信に、ゴウの背中を冷たい汗が伝う。


「フン! ええやろ! こんな悪趣味なネクタイひとつで息子の命が救えるんやったら安いもんや!」


「おとん……あかん……」


「おう、さっきから聞いてりゃおどれも俺の息子やったらそんな泣きそうな情けない顔せんと、どーんと身構えて俺を信じんかい! お前のおとんがこんな喜色悪い悪趣味なネクタイ如きでどうにかなってまう軟弱もんやと思うんか!」


寺水ゴウは偽マッスルスカイが投げてよこしたネクタイを掴み上げると、それを己の首に巻き付けた。ネクタイなど滅多にしない根っからのブルーカラーゆえ結ぶのに少し手間取ってしまうかと思われたが、それはまるで生きた蛇のようにひとりでにシュルシュルと、瞬時にゴウの首に巻き付き始める。


「ぐ!? があ!?」


「おとーん!」


目も眩むような鮮烈な悪趣味にも程があるドギツイピンクの光。苦悶の呻き声を上げるゴウ。そんな父親に必死に腕を伸ばす駆矢。ニタニタといやらしい笑みを浮かべる元・仲間。そして……。


「ほへえぇへへへ♡♡♡♡」


呆気なく、彼は陥落してしまった。全身からダラリと力が抜け、その表情には怒りも憤りもない、ただただだらしなく淫らに蕩けたいやらしい笑みが浮かぶ。

チンポは勃起し、ヨダレはタレ、眉尻は下がり、ゴリラのような顔から知性という知性があっさりと抜け落ちる。


寺水ゴウが洗脳され、彼の数十年に渡るこれまでの、そしてこれからも続いていく筈であった彼と息子の人生を自らの意思でポイ捨てさせるために要した時間はこちらの世界の時間にすればほんの1秒にも満たない僅かな一瞬であったが、そこに至るまでには彼の内面で少なからぬ葛藤があったのだ。


では、その過程をもう一度じっくり確認してみよう。ネクタイが蛇のように首に巻き付いてきた瞬間、彼は反射的にどっかりと踏ん張り負けじと拳を握り締める。


(男がそない情けない、声、出すなや! 大丈夫や! 俺は、こんなもんに負け、へんでえ!)


それが精一杯の強がりであることは誰の目にも一目瞭然であった。首に巻き付いたネクタイからはまるで植物が根を張るかのように細く枝分かれした淫らな光がゴウのぶっとい首を侵食し、同時に心臓部に向かって伸びていく。


(舐めるんやない! 親父がなあ! 息子の、見守っとる前でえ! なっさけないとこ見せられるわけが、ないやろがあ! 何が、真の息子様やっ! ふざけるのも大概にせえ! 親子の絆っちゅうもんはなあ! そんなお仕着せのもんとちゃう! じっくり時間をかけて、一緒に育んでくもんやろがい!)


それは寺水ゴウという男の渾身の雄叫びだった。男一匹裸一貫、男伊達に生きてきた浪速の男のド根性。だが、そんなものでどうにかなるのなら誰も苦労はしない。人間など所詮脳を走る電気信号によって稼働する肉塊に過ぎないのだから


(ぬがああああ♡!? 負ける! この俺がたかがネクタイなんぞに負けてまうううう♡!?)


「おとーん!」


一際強い発光。目も眩むようなピンクの光。それが収まった時、そこに立っていたのはマッスルスカイと同様にヒーロータイツの上からピンク色に明滅するネクタイと黒のナイロン靴下を装着し、ギンギンにチンポを勃起させたマッスルアースの変わり果てた姿だった。


「ほへえ♡」


「おとん! 大丈夫か! おとん!」


目的は果たした、お前はもう用済みだ、と言わんばかりに突き飛ばされる形でヤマトに解放され、畳に転がった息子が必死に父親に縋るが信じられないことに、ゴウはそんな風に縋ってくる息子の駆矢を蝿でも追い払うように鬱陶しげに突き飛ばした。


「なんや、よその子の分際で馴れ馴れしい。汚い手で俺の自慢のスーツに触んなや」


「なっ!? 何言うとるんやおとん!」


「じゃかあしい! 俺は真の息子様のお父さんにしてもろたんや! 俺の息子は真の息子様だけや! おどれなんぞ知らんわ!」


「グヒ♡ グヒヒヒヒ♡」


「ウヒヒヒヒヒ♡」


マッスルスカイとマッスルアース。いとも容易く呆気なく、ネクタイ洗脳されてしまったふたりのヒーローはまるで共鳴するかのように両腕で力こぶを作りながら、下品なガニ股ポージングを披露しながらトロリ蕩けた心底幸せそうな笑みを浮かべ、互いの股間を密着させ合って下品な腰振りスリスリ踊りを始める。


「あああ堪らん♡ 真の息子様に洗脳してもろて幸せやあ♡ なあんで俺、あんなにもアホみたいに抵抗しとったんやろ♡ 真の息子様のおとんにしてもらえるっちゅう最高の幸せを与えて頂けるっちゅうんに、チンポの足しにもならんよその子風情のために意固地になるとかほんまアホやなあ♡」


「そうだろうそうだろう♡ この真の幸せをみんなにも分けてやらねば♡ 何故なら俺たちは信頼し合った仲間同士だからなあ♡ ま、真の息子様の一番のお父さんの座は譲らないがな♡」


「せやなあ♡ ああ、はよう射精した過ぎて気が狂いそうや♡ 真の息子様のために溜めに溜めまくった子種をご褒美射精させてもらうことこそがお父さんの幸せなんやな♡ アホの俺もようやっと解ったわ♡ それ以外の幸せなんぞチンカス以下や♡ あああ真の息子様、今お前様のおとんが行くでえ♡」


ふたりのヒーローはガニ股になった脚をガッチリ絡め合って互いの体を真正面から密着させると、マッスルスカイが持つ飛行能力を駆使してそのままの姿で開け放たれたアパートのドアから夜空に向かって猛スピードで飛んでいってしまった。



「グヒ♡ はよう、はよう息子様に会わせてくれやあ♡」


マッスルアースは待ちきれない様子で目の前のスカイにせがんだ。ネクタイとチンポと筋肉を絡ませるように、カクカクと腰を振る。さっきまで息子の為に歯を食いしばっていた男が、いまはサカリのついた犬のようだ。


「おうう♡ ま、まあ待て待てえ♡」


そんな浅ましい刺激にマッスルスカイの股間はごくごく当たり前のように興奮し、スーツの中にネバネバとした先走りを垂らしている。待ちきれないのはヤマトも同じだ。ロケットのように高く上へと飛ぶと、そのぶん息子に近づいているということを感じられて、それだけでもうセックスの最中などより発情してしまう。


近づいている。もうすぐ会える。やっと会える。立派な子持ち中年大工である寺水は、生まれて初めての対面より期待と興奮でチンポを固くしていた。


「スカイイ♡ お前さんが飛行能力持ちで助かったわ♡」


「なあにこれからは父親同士、今まで以上に助け合っていかなければいけないからなああん♡」


二人は熱い友情の言葉を交わしながら、しかし少しも視線は交わらしていなかった。濁りきった目は妄想の世界を見つめている。帰った息子が父である自分に駆け寄り、笑いかけ、褒めて、そして射精の許可を下してくれる。


「はひい息子さまあん♡」


「真の息子さまあ♡」


まだ起きてもいない未来を夢見ながら、二人の親父はグネグネと腰を絡ませあった。まっすぐ空へと登っていくマッスルスカイのパワーが乱れ、へろへろとうねるように蛇行する。


出しすぎた先走りがテカテカのスーツに染みをつくって、ボタボタと雄臭い雨を降らす。それはヒーローたちの護っていた街に、家に、人々の上に垂れていった。


あまりの出来事に放心状態だったゴウの息子が我に返る頃には、残されていたのは噎せ返るようなチンポの臭いと臭い足の臭いだけだ。


「おとーん!」


慌てて部屋の外に飛び出し、アパートの手すりから身を乗り出して夜空に向かって叫ぶ。だが彼の父親が戻ってくることは二度となかった。




つづく



――


『里村先輩! 大変です! すぐに町外れの廃工場まで来てください! 他の2名も既に到着してます! ぐわあー!?』


「ヤマト! 何があったんじゃ! ヤマト! 応答せえ! クソ!」


深夜。明日に備えて異世界に旅立つ万端の準備を済ませ、万が一自分に何があった時用の置手紙をしたためた里村タイヨウは、自衛隊の宿舎で眠っていた。だが突如として夜中に仲間からの緊急連絡が入り、慌てて変身して基地を飛び出した。

彼のスーパーパワーは水中或いは水上でこそ発揮されるものだ。メンバーの中で唯一空を飛べるマッスルスカイのように急行することはできない。パワーが足りないならば、その心と根性で。彼は出来得る限りの全速力で仲間の元へと駆けつけた。


「すまん! 遅くなった! みんな大丈夫か!」


栄雄の街をヒーロースーツ姿で法定速度ぶっちぎって駆け付けた現場は、しかし予想に反して静まり返っていた。

ヤマト、いやリーダーのマッスルスカイからから指定された廃工場に人影はなく、ヴィランの気配は少しもしない。とてもじゃないが戦闘が行われている、或いは行われた形跡はなかった。真っ暗闇の中でもバイザーに搭載された暗視スコープ機能で問題なく視界を確保できる彼は、慎重に廃工場へと足を踏み入れた、その瞬間。


「ぬがァッッ!?」


鮮烈なピンクの光が廃工場とマッスルネイビーを襲った。単純な目つぶしだが、その角度、タイミング、激しさ、すべてが完璧だった。マッスルネイビーは網膜を焼かれ、咄嗟に両手で顔を覆った。野太い悲鳴を上げるマッスルネイビー。そんな彼の首に、音もなく伸びたピンクのネクタイが蛇のように絡んで巻き付いた。


「い、一体何がっ!? ――ガッ!?」


幸せお父さんネクタイから発せられる洗脳電波が、里村の肉体を蝕み、彼の精神までもを侵食していく。それはまさしく寄生だった。寄生虫のように寄生植物のように、お父さんの根が里村の脳に絡み付いて食い荒らしていく。ガッチリと支配され汚染され、徐々にお父さん化が進行していく。それは結婚も妻の妊娠出産も体験したことのない彼にとっては、抗う術を知らない未知の喜びだった。

そして――


「………………ぬほ♡」


全身からダラリと力が抜け、表情から怒りも憤りは消え失せ、ただただだらしなく淫らに蕩けたいやらしい笑みが浮かんだ。

時間にすれば1秒にも満たない。僅かな一瞬。たったそれだけの時間で、彼もまた寺水ゴウと同様、呆気なく攻略され、陥落した。


里村タイヨウが洗脳され、彼の数十年に渡るこれまでの、そしてこれからも続いていく筈であった彼の自衛官人生を自らの意思でポイ捨てさせるために要した時間はこちらの世界の時間にすればほんの1秒にも満たない僅かな一瞬であったが、そこに至るまでには彼の内面で少なからぬ葛藤があったのだ。


では、その過程をもう一度じっくり確認してみよう。ネクタイとも認識できぬピンクに発光する何かが蛇のように首に巻き付いてきた瞬間、彼は咄嗟に両手で己の頭を鷲掴みにする。


(真の、息子様!? ち、がう! 違う違う違うわい! こんなもんは、真の喜びとは程遠い! ただの偽りの、見せかけの、紛いもんじゃ!)


そう、喜びである。恐怖を克服できても、怒りを制御できても、喜びを抑え込むことのできる人間はそうはいない。快感、快楽、雄が雄であるための、人が繁殖する生物であるが故の、本能に根差した根源的で原始的な喜び。だが里村は必死に耐えんと踏ん張る。


彼は知っていた。幼い頃から愛し続けた、世界でたったひとりの愛する男の人生の喜びを誰よりも間近で苦々しく見せ付けられ、だが同時に喜ばしく見守ってきたが故に。こんなものは、他人から与えられた人工的な喜びなんて悍ましい代物は、浅はかで薄っぺらい偽物でしかないのだと。


(本当の幸せっちゅうもんは! 誰かに与えてもらうもんじゃあないわい! 自分の足で歩いて! 生きていく先でえ! 自分の手で掴み取るもんじゃろうがあ!)


だが、大層ご立派なスピーチも、歯ぎしりがするほど食いしばった口も、全く無駄な徒労であった。


(ぬほおおお♡!?)


ビリビリビリビリ! と肛門の奥深くで、遂に幸せお父さんネクタイの浸食が前立腺に達する。乳首が、前立腺が、チンポが、脳みそが。全身全霊で里村タイヨウという男の人生を、これまでに蓄積された経験により培われた人格を、踏み躙るように上書きしてしまう。


男というのは所詮チンポの快感に勝てない生き物なのだ。里村が悪かったわけではない。人間である以上、それは男に生まれた人類共通の不可避の弱点だっただけだ。足が自然と開いていく。チンポが硬く張り詰めていく。


「ぬほお♡」


そうしてピンクの光が収まった時、そこには全身からシュウシュウとイカ臭い雄臭い湯気を放ちながら、ネクタイとナイロン靴下完備の幸せお父さん人間にされてしまった喜びに未だかつてなく年甲斐もなくチンポをビンビンに勃起させて佇む元正義のヒーロー、マッスルネイビーの無様な姿だけがあった。


「ニヒ、ニヒヒヒヒ♡ はい! わたくし里村タイヨウことマッスルネイビーは! 幸せお父さん人間に改造して頂きましたあ♡ 真の息子様にお仕えさせて頂き幸せであります! これが! お父さんになることの喜び! こんなにも幸せにして頂いてよいのでしょうか! はあ♡ 幸せじゃあ♡ 幸せ過ぎて脳みそが爆発してもうたんじゃあ♡」


「よし! これで里村先輩も幸せお父さん人間の仲間入りだな♡」


「普段俺のこと短絡的やの短気やの偉そうに言うとる割には、自分もマヌケなやられ方してもうてまあ♡」


マッスルネイビーは下半身は下品にガニ股勃起状態で、上半身はビシっと自衛官らしく敬礼をしながら、敬礼射精をしようとしたが、上手くいかない。それもその筈。幸せお父さん人間の射精は真の息子様を楽しませ、喜ばせるためだけに存在するため、真の息子様の許可なく勝手に射精することは赦されないのだ。


従来の数百倍、或いは数千倍、下手すれば数万倍の勢いで金玉フル稼働で大量生産されるお父さんザーメンがパンパンに詰まった金玉が今にも破裂してしまいそうなぐらいに射精欲が脳の99%を支配し、残り残った1%で真の息子様、即ちこのネクタイを下さった者への愛情がドバドバと彼の脳内に溢れ出して止め処なく果てしなくドクドクバクバクと熱き心臓が脈打つ血がチンポを硬く張り詰めさせる。


本物の幸せなんぞクソくらえだと思った。本物だろうが偽物だろうが、所詮は快楽物質が脳を刺激するだけの脳が見せる幻影。天然物をありがたがるのは暇な金持ちだけで充分だ。貧乏人は、より多くの庶民は、添加物たっぷりの飯を当たり前に食って生きているのだから。


「はい! わたくしは幸せお父さん人間でえあります♡ お父さん射精射精射精射精射精、息子のためにお父さんの射精は息子様を楽しませるために自分はお父さんお父さんお父さんお父さん♡ はあ、ワシは幸せなお父さん人間でありますううう♡」


「なんや? 様子が変やないか?」


「恐らくだが、里村先輩は俺たちと違ってお父さんになった経験がなかったがために、父親になるという喜びに脳が抗えずに暴走してしまったのだろう。まあ、実害はない。放っておけばいいさ」


「ウヒヒヒヒ♡ こんな調子やったらライバルにもならへんわ♡ やっぱ実際にチンポで子作りしたことのある男の方がお父さんとして優秀っちゅうこっちゃな♡ よその子とはいえ子作りしといて正解やったわ♡」


デレデレ、ニタニタと、まるで天上におわす神様に敬虔な教徒が祈りを捧げるかの如くに、ギンギンに勃起させたチンポを藍色タイツの中でモゾモゾうごめかせながらお父さんの逞しさをアピールする幸せお父さんポージングを披露するマッスルネイビー。


そんな仲間の姿をニヤニヤニタニタ見つめながら、マッスルスカイとマッスルアースも彼に負けじと最高にかっこいいお父さんポージングを無様に披露しつつ、射精したくて堪らないと疼きまくる金玉をピッチリ食い込むタイツの内側でヒクヒクさせながら子種の代わりに小便のような我慢汁をドロドロダラダラと垂れ流しに迸らせ。


お父さんにとって大事なのは家族の一番であることである。一番になることではない。一番であることが当たり前なのだ。だから絶対に負けられない。お父さんが一番、と言われる幸せを誰にも譲りたくはない。だから3人はもう同じ正義を志した仲間ではないのだ。真の息子様の一番の座を奪い合う敵同士なのだ。


「おほお♡」


「ぬふう♡」


「んほお♡」


ネクタイを締め、ナイロン靴下を履き。立派な幸せお父さん人間になった3人は、真っ暗な廃工場で朝になるまで体を密着させ、3人がかりで夜通しガニ股チンポを擦り合わせ続けた。まるで己のチンポこそが一番のお父さんチンポであると主張するように。闘牛がその角を突き合わせて相手を刺殺するように。



「や、やはり実の父、血の繋がりこそ正しい父……。そこんトコいくとなあ、俺がイチバンに間違いないなあ♡ タカアキには、グフ、父さんと同じ立派なチンポがついていることだしなあ♡ ああ口にするとたまらないぞお♡」


「ネクタイなんぞ締めて靴下履いて、今までこんな格好一度もしてこなかったけど、息子のためにピシッとキメたっちゅうのは最っ高のアピールポイントや♡ 息子の為にぜーーんぶ心を入れ替えたっちゅうんがまるわかりやからなあ♡ ぬひ♡」


「ぐひひ♡ 父さん、父さん、わしは父さんっ♡ チンポも筋肉もケツも全部息子のため、グヒ、なんでも全部全部♡ わしがイチバン、イチバンじゃああ♡ んほおお♡」


我こそが一番のお父さんである。3人のヒーローは少しも迷うことなくそれぞれ身勝手な理由で自分こそが一番であると信じ切っていた。


ネクタイを締め直しうっとり。チンポを振りかざし恍惚。筋肉を見せつけて陶酔。脳には幸福物質がドバドバと溢れ、出してもいない精液の香りが、まるで逆流したかのように鼻に脳に込み上げてくる。そうしてますます父親臭、雄臭、獣臭にまみれた男たちは三人をブレンドするようにグチョグチョと絡み合った。

真の息子様の許可がなければ射精ができなくとも、チンポの気持ちよさは味わえる。そして1%の真の息子様への愛情と99%の欲望に支配されたヒーローたちが真の息子様の命令がない時は己のチンポの幸せだけを追求することに無我夢中になるのは、当然の道理であったかもしれない。


――


「行ってらっしゃい、あなた」


「うむ」


角山キュウゾウは愛する妻と産まれたばかりの子供に見送られ、家を出た。妻には今日、別の世界に旅立つことは伝えていない。時間軸を意識すればマルチバースに出発した5分後に戻ってくることができる、とスカイキッドことタカアキから事前に説明を受けたため、上手くいけば4人がこの世界から姿を消していた時間はたったの5分になる。無論、失敗すればその限りではないが、最初から失敗した時のことを考えるのはヒーローらしからぬ行いだ。


当然、失敗した時のために万が一に備えた保険を用意しておくのは当たり前のことだが、それでも失敗するかもしれないという思いは戦いに臨む上でノイズとなる。だから彼は今朝も、いつものように妻の手料理を食べ、いつものように帰りは何時頃になるだろうと告げ、いつものように子供と妻にキスをして家を出た。


世界はまだ日の出前。早朝過ぎる程に早朝だが、この時間帯に事を済ませればヤマトもゴウも里村も寺水も問題なく出勤することができる。世界を救った後で何食わぬ顔で職場に顔を出す、なんてのはいつものことだ。自分たちならできる。そう信じる。全ては信じることから始まるのだ。自分たちなら必ずできる、成し遂げられると。そう信じて、彼は仲間たちと共にこれまで幾つもの絶体絶命の窮地を切り抜けてきたのだから。彼はパンパン! と気合いを入れて今朝髭を剃ったばかりの頬を両手で叩き、気合いを入れた。


「おはようさん!」


「「「幸せお父さんパワアアアア♡ 勃起(ウェーイク・アップ)マッスルウウウウ♡」」」


「ぐおおおおおおッッ♡!?」


だが、そんな強い絆で結ばれた仲間たちは、たった一晩で全くの別物に変貌してしまっていた。元気よく挨拶をしながら基地の扉を開けた瞬間、三方から襲いかかってくる生臭い影。裏切り者がひとりであったならば、まだ対処できただろう。ふたりなら厳しいかもしれないが、悪あがきぐらいはできた筈だ。だが3人がかりでとなると、角山にできたのは変身アイテムに手を伸ばしながら悲鳴を上げることぐらいだった。


ガニ股でそれぞれにお父さんの逞しさをアピールすべくポージングをしたマッスルスカイの空色モッコリ股間から、マッスルアースの緑のモッコリ股間から、マッスルネイビーの藍色モッコリ股間から。3人がかりで照射された幸せお父さんビームが、角山キュウゾウの頭と顔と股間に直撃する。


幸せお父さんビームは幸せお父さん人間のチンポから出る、成人男性を幸せお父さんにしてしまうビームだ。別の世界の淀屋製作所で開発された幸せお父さんネクタイは未だ試作段階であり数が限られているため、幸せお父さんネクタイを装備した幸せお父さん人間から洗脳ビームを撃てるようにした方が手っ取り早い。そんな技術的な理由でスカイキッドが開発したビームの効果は抜群であり、足掻く間もなく万歳の状態で頭も亀頭もビリビリに痺れて気持ちよくさせられてしまった角山が雷に撃たれたように全身を痙攣させながら放心しその浸食を受け入れ始める。


忍耐は無意味だった。耐える暇は1秒もなかった。だがそれは別段、彼が他の3人に比べ劣っていたわけでない。単純に数の問題だ。ゴウは1人に。里村は2人に。角山は3人に襲われた。ただそれだけの話。等倍でも容易く人生を破壊し尽くされてしまう脅威が3倍の濃度で直撃したのだ。人間の脳が耐えられる訳がない。


時間にすれば1秒にも満たない僅かな一瞬。たったそれだけの時間で、マッスルジャスティス最後のひとりは呆気なく陥落してしまった。もはや仲間を救う術はない。全身からダラリと力が抜け、その表情には怒りも憤りもない、ただただだらしなく淫らに蕩けたいやらしい笑みが浮かぶ。今朝愛する妻子の元に必ず帰ると誓った家族を愛する父親の、これからが本番だった筈の幸せな人生を自らの意思でポイ捨てさせるために要した時間はこちらの世界の時間にすればほんの1秒にも満たない僅かな一瞬であったが、そこに至るまでには彼の内面で少なからぬ葛藤が……別になかった。


幸せお父さんネクタイを使われた場合は幸せお父さん怪人になるのだが、幸せお父さんネクタイを締めた幸せお父さん人間のチンポから発射された幸せお父さんビームを使われた場合、そいつは幸せお父さん戦闘員に成り下がる。対等な筈だった4人のヒーローたちのうち、マッスルマグマだけがネクタイ不足などという理由で使い捨てのクソザコ変態お父さん戦闘員になってしまった。


「トーサン♡ トーサン♡ ムスコサマ、バンザイ♡ ムスコサマ、バンザイ♡」


彼だけが自慢の真っ赤なヒーロータイツを着ることも赦されず、ピンクの幸せお父さんネクタイも与えられず、素っ裸に辛うじて黒のナイロン靴下だけを着用し、ガニ股になって自らの乳首や亀頭を幸せそうに弄くりながら、デヘデヘニヒニヒと頭の悪い笑みを浮かべる幸せお父さん戦闘員こと角山キュウゾウ。



「よっしゃあ、これで愛する息子に会いにいけるっちゅうことじゃな♡ はーいい汗書いたのう♡」


幼馴染にしてかつての想い人の脳を完膚なきまでチンカスに変えて置きながら、マッスルネイビーは『ソレ』にほんの一瞥もくれることなく上機嫌に笑った。心から楽しそうに父同士で肩を組むと、あとに残るのは愛しい愛しい息子様の顔だけだ。


「ああ……♡ この仕事帰りでたっぷり汗をかいた父親らしい姿を見たら、ふふ……きっとタカアキのやつ、いっぱいいっぱいねぎらってくれるぞお♡」


マッスルスカイは得意げに笑うと、乱れてもいないネクタイを弄った。ゴリラのように鼻の下を伸ばしきり、鼻の穴を開き、自分たちの汗臭さを肺いっぱいに吸い込みご満悦だ。


「はぁん♡ あっあっ堪らんのお♡ もうチンポコがうずうずムズムズしてはぁあ小便が漏れちまいそうや♡ はやくココをイイコイイコしてもらうんや♡」


雄々しく力強かったマッスルアースはもじもじとしながら、タカアキ様にしてもらいたいように自分自身で股間を優しく撫でている。知能のちの字もない振る舞いに恥じらう様子は少しもない。


「トーサン♡ トーサン♡」


マグマは……あいも変わらず同じ言葉を繰り返しながら、蟹歩きで嬉しそうにポージングをしていた。その中心、ビンビンに勃起したチンポから独りでに精液が飛び出した。戦闘員にはそれほど管理統制がとれておらず関心も向けられていないからなのだろう。結果四人の中で唯一無様な戦闘員と化した角山だけが射精の快感を味わっていた。飛び出した精液は凄まじい量だ。彼らがどれだけの気持ちよさを味わっているかがわかる。

とはいえ、残るマッスルジャスティスはもうすぐ会える息子様への期待で、角山のことなど見てもいない。戦闘員は戦闘員で、わざわざ彼らに優越感を感じるほどの知性はない。


「ぐひ♡ ぐひい♡」


ただただそこにはやかましく喘ぐ親父三人と、四人分の射精より大量の精液を吐き出す親父が一人いるだけだった。


かくしてマッスルジャスティスはこの日、完全壊滅を成し遂げたのだった。




――


「それじゃあお父さんたち、頑張ってね。上手に世界征服できたらご褒美射精させてあげるからさ」


「ああ!♡ この父さんスカイに任せてくれタカアキ様っ! この私がタカアキ様に関することでよそのお父さんなんかに負けたりはしないからな♡ 必ずやタカアキ様のご期待に副えてみせるともっ!」


「アホ抜かせ! タカアキ様にチンポコをいい子いい子してもろて気持ちよくお父さんザーメンぶっ放すんはこの父さんアース様や!♡ はああタカアキ様可愛ええのう♡ 堪らんのう♡」


「はひい!?♡ タカアキ様あ、真の息子様の可愛いお手手でケツの穴にジェット花火ブッ刺して頂けて本官は堪らなく幸せであります♡ 必ずやマルチバースを征服して来るでえあります!♡」


淀屋ヤマト。寺水ゴウ。里村タイヨウ。空色、緑色、藍色のヒーロータイツの上からドギツイピンクに発光するネクタイを締め、黒のナイロン靴下を履いて幸せお父さん人間として完成した3人の屈強な元ヒーローたちは、ガニ股勃起ポージングをしながらニカニカニタニタと得意満面の笑みを息子様に向ける。誰が一番真の息子様のお役に立てるかで競い合い、そして褒められ、射精させて頂くことしか今の彼らの頭にはないのだ。


彼らの頭上にはそれぞれ3つの穴が空間を引き裂くように空いており、その向こうには別の平和なマルチバース世界が広がっている。そう、彼らは幸せお父さん人間として、スカイキッドタカアキ少年のマルチバース侵略計画の尖兵となり別の並行世界を侵略しに行くのだ。そして、それを心から誇りに思っているのだ。


「行ってらっしゃいお父さんたち。それじゃあ、出動!」


「ぬほおおおおお!♡」


「んひいいいいい!♡」


「おっほおおおお!♡」


三者三様、それぞれ違った己の肉体を最大限アピールせんと披露するガニ股勃起ポージング姿のまま、3人の元ヒーローは空へと飛翔し、そして同時に射精しすっ飛んでいった。3人がピュンピュンピューンと雄汁はを撒き散らしながら消えていった。まるで打ち上げロケットから立ち上る白煙のように、それらは強烈なイカ臭さだけを残して消えていった。

おそらくロケット同様、彼らの脳からは余計な重みが綺麗サッパリ切り離されて、別次元に到着した頃には他のすべてを犠牲にしてでも任務を達成する完璧なトーサン人間となっていることだろう。


「――――――」

次元に空けられた穴が閉じ、マッスルジャスティスの秘密基地に残されたのは、笑顔で手を振って彼らを見送ったスカイキッドタカアキと、底辺戦闘員の角山のみとなった。


「さて。それじゃああの3人が頑張ってる間に、角山のおじさんを量産しようか。戦闘員なんだから、やっぱそれなりの頭数が欲しいよね。ああそれと、この世界の僕のことも『説得』しなきゃ」


「トーサン、トーサン♡ ムスコサマ、バンザイ♡ ムスコサマ、バンザイ♡」


角山キュウゾウは幸せだった。お父さん人間にはなれなかったが、お父さん戦闘員になれたお陰であの3人が出撃している間に自分だけが真の息子様のお傍にいられる、真の息子様を独り占めできるのだから。


これから自分のクローン人間を作る宣言をされたというのに、心から嬉しそうに他の3人とは異なる丸出し勃起お父さんチンポをフリフリしながらビクビクと我慢汁を飛び散らせ、喜びのコマネチを披露しまくるお父さん戦闘員・角山キュウゾウ。こうして正義のヒーローチーム、マッスルジャスティスは壊滅した。彼らがその後どのような活躍をしたかは言うまでもない。







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