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けもケット12にて参加させていただいたアンソロジーの小説を、許可をいただき掲載させていただきます。

挿絵はびーとさん(https://www.fanbox.cc/@beat1213)に書いていただきましたー。そしてこちら、次の野郎フェスでケモおっさんヒーローアンソロジーがデますので、そちらもよろしくお願いします!小説漫画情熱欲望たっぷり詰まったアンソロです!







 犯人確保よりマイナス334秒

シティDBに到着。報告通り数キロ周囲に民間人確認できず。

 犯人確保よりマイナス303秒

武装した犯罪者6名と、仰向けに倒れるヒーローを確認。

 犯人確保よりマイナス302秒

火薬臭に混じり精液の臭いアリ。新兵器使用の可能性大。


「た、頼むぅ、もう一回、さっきのもう一回ヤッてくれぇへぇ♥」

「うっわおっかし~、あの猛牛ヒーローがコレだぜっ。マジでこの爆弾凄すぎだろ、ほらほらチンチン絞ってあげましょうか~


「これならどんなヒーロー来ても負ける気しないな、なッ


「ンオォォオ♥ 気持ちイィい気持ち良すぎるゥ♥ スーツに締め付けられておかしくなるぅぅう♥♥ ブムォォン♥♥



 犯人確保よりマイナス235秒

状況把握、行動開始。天より咆哮を轟かせ視線を誘導。

 犯人確保よりマイナス230秒

上空よりヒーロー協会声明文の読み上げ。警告。効果なし。

 犯人確保よりマイナス210秒

翼を広げ、翼膜で光を遮り黄金色の輝きを示す。効果あり。

 犯人確保よりマイナス205秒

犯人の1名が手に持った爆弾型兵器を掲げる。

 犯人確保よりマイナス204秒

ヒーロースーツ出力最大。鱗と筋肉の隅々に電流が走る。

 犯人確保よりマイナス204秒

攻撃を開始。

 犯人確保よりマイナス204秒

犯人一名、竜爪による大地へ叩きつけ。無力化。

 犯人確保よりマイナス204秒

犯人二名、竜尾による腹部へ強打。狼、兎を無力化。

 犯人確保よりマイナス203秒

咆哮により有翼獣人ニ名の行動を制限。

 犯人確保よりマイナス203秒

地上に残る一人に浴びせ蹴りが命中、無力化、同時に跳躍。

 犯人確保よりマイナス203秒

至近距離に近づいた有翼種の腹に拳を打ち付ける。無力化。

 犯人確保よりマイナス202秒

別の有翼種が機械式の銃を構える。鱗を射出し攻撃。


「――勘違いされても面倒故、念のため言っておく。喋れる者が一人は必要だったから、その玩具だけを狙ってやったのだ」

 腕を組み、翼を動かすこともなく浮遊しながら竜は言った。その言葉が事実であることは、地面でもんどりを打つ5人の仲間を見れば明らかだ。いや、たとえこれが一対一の状況でも変わりはなかっただろう。鈍色のヒーロースーツに覆われた分厚い筋骨隆々の肉体。スーツと同じ色の雄々しい髭。そして、それらの渋い色味を引き立てるように、露出した頭部と両翼は黄金の輝きを放っている。

 竜族。古代種の生き残りにして、他種族より圧倒的長寿と身体能力を持つ、伝説に等しい種族。現在ヒーロー協会に所属しているのは、ただ一人のみだ。




「スケイルロード……え、う、嘘だ、まさかそんなヒーローが、お、オレらはちょっと……イタズラしてただけじゃないか」

「イタズラ、か。街の住民全員を避難させねばならぬほどの大規模占拠。届け出のない武器の製造、爆薬の無許可所持。これだけしておきながらその態度。褒められたものではないな」

ドラゴンヒーロー・スケイルロードは上空からふわりと降り立つと、呆れた表情で髭を掻いた。地に足をつけて尚他獣人を悠々と見下ろす巨躯と翼が影を作る。

このヒーローの名を知らぬものなど、地上にいるだろうか。無敵の鱗による防御。絶対の火炎による攻撃。そして予知にも近い予測を立てる頭脳。彼の存在は大げさでもなんでもなく、竜族以外のすべての生き物の脅威である。

「――加えて……ヒーローに対する攻撃までしていたとなれば、これはもうお説教だけでは済まんぞ


スケイルロードは改めて、すぐ後ろで仰向けに倒れたヒーローに目を向けた。鍛錬の賜であろう肉体にヒーロースーツを身にまとった屈強な牛獣人が、そのスーツに男性器をクッキリと浮かび上がらせてだらしなく痙攣し、「あぁッ……♥ うへ……♥」と場違いな喘ぎ声を上げている。あきらかに異常な姿だ。おそらくこれが、話に聞く新兵器の影響なのだろう。

「お説教……ッ、だと、子供扱いするな!」

「すまんな、儂には貴様らの種族の成熟度がイマイチわからんのだ。まあ、ヒーローがいる世界でこのような愚行に及ぶ者など、……お仕置きの足らぬ子供で間違いはないだろう」

「➖➖➖➖ッ!!」

事実、彼らはヒーローたちに比べれば年若い男だ。しかし、竜の口調や態度はそれ以上に、親離れも済んでいない子供に向けるようなものだ。悪意ある言葉ではなく、竜にとってそれは単なる事実といった口調。それが彼らをより苛立たせた。


「お、おまえも、お前も腑抜けにしてやる!


犯罪者はそう叫ぶと、懐から二つの爆弾を頭上に掲げた。二種類の臭いがする。片方からは火薬の詰まった臭いだ。そちらはさしたる問題ない。

「なるほど、それが新兵器というヤツか、見た目はそう変わらぬのだな、よく作ったものだ」

「うるせえぇッ!」


 犯人確保よりマイナス17秒

爆発物が作動。ロックの解除方法の目視にて確認。

 犯人確保よりマイナス17秒

鱗射出。新兵器を作動寸前で犯罪者の手から奪取。

 犯人確保よりマイナス15秒

残る一方の火薬性爆薬起動、竜翼を延長、これを奪取。

 犯人確保よりマイナス14秒

爆薬炸裂。

 犯人確保よりプラス16秒


「………嘘だろ」

「ふむ……こちらの爆弾も、大きさの割になかなかのエネルギー量だ。しかし……癇癪を起こしてここら一体を吹き飛ばそうとするとは、儂の予知の能力もまだまだだな


 こともなげにそういうと、スケイルロードは胸元を軽く払った。爆弾は翼膜で覆われ、さらに胸元と腕で抱え込むようにされ、区画一帯を吹き飛ばす筈だった威力は、金色の鱗に傷一つつけることなく終わった。

「ぬぅ……イカンな。また開発担当に呆れられてしまう」

 しかしさすがにヒーロースーツは無事では済まず、逞しい竜の肉体が前方部分だけが露出していた。せり出した胸板、割れながらも突き出た腹筋、太い胴体、そして膨らみとうっすらと縦に割れた股間。ドラゴンヒーローは少しばかり名残惜しそうにスーツの残骸を脱ぎ捨てた。

「さて、兵器の使用方法も見せてもらった、貴様のような悪ガキには、このヒーロー直々の折檻が必要なようだな」

 そう言うと、金色の鱗に覆われたヒーローは一歩犯罪者に足を進めた。全裸だが、その姿を恥じる様子は一切ない。地面が揺れ、空気がよどみ、まるで酸素までもが竜のものになったかのような威圧感。

竜が咆哮と同時に炎を吐き、空へと狼煙のように上げた。赤々としたエネルギーが立ち上る。ヒーローの勝利宣言と、圧倒的な力の誇示。

最後の一人が気を失うのに、一秒と掛からなかった。



 事件解決から……およそ20分後

「そういった事の次第で、貴殿の新作を無駄にしてしまった。すまんな。残ったのはコレだけだ


「……い、いえ……謝罪は不要です。これもまた私どもの力不足ですので……ハイ


「ムッ、何を言う! そんなことはないぞ。このスーツは十分に働いてくれた。相手の心拍や武装のサーチ? だとかで新兵器を割り出すのに随分助けられた。惜しむらくは耐久性だな」

「――その耐久面を強化したのが、このスーツだったのですが……。いやはや……」

白衣を纏った若い熊獣人は、残骸となった最新鋭のスーツをしげしげと見つめて呟いた。斬撃、打撃、銃撃、全てに対応したつもりだが、ゼロ距離で爆弾が炸裂するのは想定外だった。自信作の無惨な姿に、思わず顔が強張っている。

「ヌゥ……! その……いや、なに、大事には思っているのだぞ! なに、このまま研究を続けていれば、いずれは儂の鱗にも肉薄するような技術に到達するだろう。日夜励み、幾万の夜を超えた先にこそ栄光はあるものだ」

「我々の寿命は――ああいえ、はい、アリガトウゴザイマス」

若き博士は言葉を飲み込み、ただ竜の激励を受け入れた。彼の態度に一般に知られる竜のような尊大さはなかった。竜族として、自らに肉薄するだろうというのは最大級の賛辞なのだ。ヒーローとしても、竜としても、なによりヒトとしてスケイルロードは尊敬できうる男である。

「うむ、この新米ヒーローもよく戦ったものだ。彼の献身により、私も余裕を持って情報の収集にあたれたのだ」

「………」

いえ、この猛牛ヒーローはこの道二十年のベテランで、子供もいらっしゃるんです。そんな言葉も敢えて言うまい……。

「もっとぉぉ……もっとチンポォ♥」

「して、この男は正気には戻るのか?」

「……医療チームが現在特効薬を研究中です。しかし、重要な研究施設もシティにあるため、まずは街の奪還が望まれます」

「ふむ、単純な話であるな」

苦々しい博士の口調に、ドラゴンはいつもの通り髭を弄って微笑んだ。

「今回の事件は、この儂が最後まで面倒をみよう。なァに、そう時間は取らせんよ」

市民は知らぬことだが、シティDBは重要施設を要する街だった。通常の工場に偽装されたヒーローの研究施設が多数あり、護衛のヒーローも十分量配備されていた。そんな街が一夜にして、不良少年グループのような一段に占拠された。ありえないことだ。急遽ヒーロー達が出撃し、街の奪還に向かった。……そしてそれでも、街から帰るヒーローはいなかった。 

ベテランたちは返り討ち……というか、使い物にならなくされた。あの新兵器。爆弾の青い光を浴びたヒーローは皆――「んごぉぉ♥ だめだあぁ腰振り止まらん♥ ヒーロースーツに腰振りしまくり気持ちぃいィィッ、パパ気持ちぃ良いィッ♥♥」「こうなる、というわけか。ただ光だけで、とは……まったく儂の炎よりも厄介なものだな」

「さすがに光に防御など、鍛錬できるものではありませんから

「う――んンンンンッ♥♥」

繁殖のために必要な本能を利用されるとは、如何なるものなのだろうか。三大欲求の一つである睡眠などは、三日も取れなければ、ヒーローであろうと正常な判断力を失うと聞く。竜が想像するよりも、この新兵器は恐ろしいものだということだ。彼らにとっては。

 

「しかし、窮屈そうだな、これは解除せんでもよいのか?


「ンギィィィイイ!? ソコォオォッ、さ、触ったらアフゥゥ♥


ヒーロースーツに浮かび上がる肉棒を指先で突くと、屈強な牛ヒーローは瀕死の虫のようにバタバタと暴れ喘いだ。ひとしきり喘いだ後、スーツを貫通してドロドロの先走りが、竜の指先にべったりとついた。

「………。この状態を維持することがもっとも彼らの為なんです。その……スーツの刺激で射精していれば……とりあえず暴走することはありませんから……」

博士は苦々しく言った。スーツを解除したヒーローが、ひと目も憚らずに足を広げてヨダレを垂らして肉棒と尻を弄りだし、挙句の果てに快楽を求めるあまり「なんでもします♥ なんでも言う事聞きます❤」と腰を振り出したのを見てきたのだ。それに比べれば、スーツに擦り続けて射精している姿の方が、彼らにとってまだ尊厳ある姿といえる。ヒーロースーツが彼らをギリギリ守っているとは、皮肉なものだ。

「ふむ、成る程……、早急な事態の解決が望まれるということだな。君と楽しく話をしている場合でもないようだ


 竜はそう言って、修復されたばかりの変身ブレスレッドに手を伸ばした。鈍く光る黄金色の鱗が、瞬く間に滑らかで光沢あるスーツに覆われていく。完璧なフィット感。適度な締めつけが筋肉を程よく刺激し、身体能力を完璧なものとする。現代科学の粋を集めた傑作だ。

「ム……ッ、うム……! 新品同様だな。さすがだ博士くん」

今しがたしていた会話のせいで、これまで考えたこともなかった『刺激』を鱗越しに感じてしまったが、そんなことはヒーローたちに対する敬意を欠いた考えであるとし、スケイルロードは言葉をすべて肚の奥へと飲み込んだ。

「では行ってくるぞ。この儂が活躍でもって、ヒーローとはなんたるかを、悪党どもと……ついでにヒーローたちに教えてやってしんぜよう! ガッハッハッ!」

それが、致命的となる過ちとなった。



 事件解決からマイナス1800秒

再びシティDB、兵器工場と化した研究施設の屋根に到着。

 事件解決からマイナス1755秒

周辺の声、物音、磁場量から状況確認、スキャン開始。

 事件解決からマイナス1720秒

非分なる武装をした小僧に混じり複数のヒーローを確認。


「へへ……ほらほらとっとと動かないと、スイッチ切っちゃうよ? 、命令通りにしないと、気持ちよくなれないよ~


「ヌゴォオッ……そ、それだけは、それだけは勘弁してくれえぇ❤ わかった、わかったッ、オジサン命令きぐゥゥ❤」

「ヒーローがこのような命令に屈するわけには――そ、そう考えると、ますます気持ちよくなってしまうゥゥ皆すまない❤



 最初に聞こえたのは、耳を犯すようなヒーローたちの嬌声と、犯罪者たちの嘲笑だった。この施設はヒーローにとって重要な拠点だったという。おそらくそのデータを奪われ、彼らはスーツの機能にハッキングを受けているのだろう。この距離からも時折、『スーツがヒーローを犯す』醜い音が聞こえてくる。その甘い褒美のために、彼らは工場内を歩き回り、データを次々に明け渡している。

哀れなものだ。肉欲というものはそれほどに抗いがたいものなのだろう。本能に根ざしたものだ、彼らに罪はない。救ってやらねばならない。


事件解決からマイナス1615秒

炎の塊を複数屋上に設置。一斉攻撃の準備完了。

事件解決からマイナス1613秒 

攻撃開始。

 事件解決からマイナス1602秒

天井一部崩落、生ずる混乱と同時に侵攻。第一波成功。


「スケイルロードだッ、スケイルロードが出たぞ!


数時間前にお仕置きした彼らは、どうやら最後に儂のことを伝えられたようだ。スケイルロードは少々感心しながら、足払いで三名の犯罪者を無力化した。

「敵うわけないんだ! 冷静になれ、ヒーロー達を盾にしろ!」

「おおまったく、悪い子だ」

襲撃を多少は想定していたようで、配置されていたヒーローの影に隠れていく。遠方にいるリーダー格が手元の装置を弄ると、四方から「ムォォオ❤」と野太い喘ぎ声が轟いた。スケイルロードのスーツも同じ影響を受けたのか、多少締め付けが強くなる。しかし多少股間の違和感が強まった程度だ。このような刺激で彼らは大声を上げているらしい。

「ヌゥゥ、ヒーローを裏切るなんて――ああ、でもダメだァ❤」

「スンマセンスケイルロードッ……、でも俺コレくらったら❤


「きぎますゥ、言う事聞きますゥッッ❤


ヒーロー達がまるで機械仕掛けの人形のように、スケイルロードに立ちはだかる。竜ほどではないが、彼らは横にも縦にも大きなヒーローたちだ。そんな彼らに一斉包囲されて視界が輝くヒーロースーツに覆われる。


「よし、今だ! 作戦開始!

 

抱えた欲望が強ければ強いほど成長は早い。その速度をドラゴンは甘く見ていた。スケイルロードの視線を塞ぐヒーローたちの壁の向こう側から、一斉に『物体』が放り投げられた。爆弾、炸裂弾、それに混じる新型兵器。ヒーローたちを狂わせた忌むべきものだ。すでに大量生産に成功していたのだ。

「よっしゃあ喰らえ喰らええ♪」

「――ふぅむ、仕方あるまい……!」

回避は可能だった。飛翔、潜陸、選択肢は複数あった。だが、この爆弾が再び炸裂すれば、それを浴びるのはこの若き(スケイルロードにとってだが)ヒーローたちなのだ。それはあまりに忍びなかった。

清く正しいヒーローたちを、逞しいまま保つためにヒーローは一肌脱いだ。文字通り。スケイルロードは投げ込まれた爆弾を羽で素早く集めると、再び逞しい胸板で抱え込んだ。金色の鱗の鎧に囲まれ、哀れ新型兵器も爆弾も、ただ輝くだけの玩具へと変わる。……はずだった。


 事件解決からマイナス1650秒

ヒーロースーツ7割が消失、肉体へのダメージゼロ。

「これで問題は―――ムゴォォッ、ンゴォォオオッ!?


 事件解決からマイナス1650秒

周辺への影響極めて軽微。問題、延焼なし。


「な、なんだ、成功ッ、問題ない筈ッ、ぬァァ儂の中からナニかが出てくるッ、なんだこの感覚は、これはイカンッ、イカンッ!」

濁り、上擦り、震えるようなその咆哮は、スケイルロード自身も含めかつて聞いた者などないものだった。体が熱い。肉が疼く。一つの欲望だけが、体内から絶えず湧き上がってくる。


「え、あれ……なに、うまくいったの?」

あっけにとられたような声が聞こえると同時に、股間にある縦に伸びた筋の奥から、ズキズキとひときわ激しい疼きが湧き上がった。何年も使っていない、神聖なる竜の秘部が➖➖

「こ、この儂が、竜が、こ、このようなことにいぃぃいッッ」

ズロリ……と、そこから先端が飛び出し、汁を吐き出した。竜は慌てて、自らの力強い手で股間を隠すが、その指の間からボタリと汁が垂れる。その動きなどは、まるで三流の芸人のようですらある。滑稽を自覚するも、それを解決する手段が頭に浮かばない。浮かぶのは……醜く卑猥で……淫らな――

(ぬぅぅぅッッ、このまま晒せぬ、晒してはおけぬ……! このような醜態、か、隠したいぃぃい!)

恥じることなど何処もない無敵の肉体、何年、何十年、何百年揺るがなかった自信は崩れ去った。陰茎が露出しようとしている。それどころか、卑猥な汁を垂らし始めている。頼みの綱のヒーロースーツは、先の爆発でやはり大半が消失している。腕を封じ、翼や脚だけでもこの事態を納めることは容易だろう。だが、このような滑稽な股間を押さえた姿で戦うことは、スケイルロードたる誇りが許さなかった。

(そうだ……まだ、なんとか……!)

スケイルロードは咄嗟に、数刻前の会話を思い出していた。研究者くんの言葉、スーツの機能。この状態を解決しうる、頼みの綱があるではないか。

「こ、このような辱めで、この……スケイルロードが、正義のヒーローが、止まると思っていたのか……!」

 スケイルロードは体を屈めるとブレスレッドに手を伸ばした。ボロボロのヒーロースーツに、最後の勇姿を示させる。轟々とした破壊音の中に、ヒロイックな閃光が迸った。


事件解決からマイナス1620秒

スーツの適応完了。状況改善。


すべてが収まると、そこにスケイルロードは立っていた。黄金色の鱗と肉体、大きな一対の翼、凛々しい尾、、そして……。

「な、なんだぁ……アレ」

その姿を目撃した犯罪者は、しかし怯えるどころか呆然とした表情を顔に浮かべた。焼けて消えた腹やボロボロになったヒーロースーツは、重要な部分だけを守るために新たな姿に変化していた。極めて機能的な姿への進化だ。だがその姿は。

「マ、マンキニ…………?」

股間を隠し、かつ最大限肉体を隠すようにヒーローを覆ったスーツは、大きなVの字をヒーローの肉体に描いていた。だがそれを見て人々が思い出すのはマニアックなAVやコントだ。肉体を強調し、尻や股間に食い込む、隠しているようで晒している変態趣向の卑猥な水着。それでしかない。

「フゥウ――」

だが、それを笑えるものはここにはいない。姿はともかく竜の表情は先よりも比べ物にならないほど苛烈になっているのだ。スケイルロードの目はギラギラと怒りに満ち、隠れていた牙が露出している。太い眉毛は逆立ち、口からは小さな炎が上がっている。逆鱗。そんな言葉が頭に浮かぶ。かつてまだ竜が多く地上にいた際に、彼らに歯向かった文明がどうなったか。子供でも知っている昔話だ。

一歩、スケイルロードが進んだ。

生物の本能だろう。誰の喉からも悲鳴に似た声が漏れた。


「貴様らもう………も――ンンン!? ゴオッォオォンッ♥」

しかし次の瞬間、無敵のヒーローは天を仰いで咆哮した。

誰かが何かをしたのか? 周囲を見回して仲間に目配せをするが、誰もが同じようにオロオロとしているばかりだ。

「―――あ」

そのうち一人が、スケイルロードを指さした。仰け反る彼の股間は、明らかに隠していたときよりも大きくなっていた。

「グ、なんだ、コレは一体、なんなのだァァッ……」

全身を覆うスーツであったことで、ドラゴンの股間に対しては干渉が薄かった部位がマンキニになったことでクリティカルに収納部分と尻に食い込んだのである。

隠したかったはずの肉棒はますます大きくなり、いやらしい汁が溢れるのまで見せつけていた。そのうえ大きな肉棒がマンキニを引っ張って、グイ……グイ……とますますスケイルロードにマンキニを食い込ませている始末だ。

「ハァハァ……ガァ……何故だ、何故だァァ♥」

己の体に起きていることを理解できない竜は、頭を抱えて仰け反っている。その様子があまりにも真剣で、一人の男がつい吹き出すように笑った。


「そんなチンチンギンギンにしといて何故もなにもなくない?」

 一人が笑いだすと、途端に周囲に緩んだ空気が広がった。一人、また一人と笑い出す。「竜のチンポって初めて見たわ~」「もしかしてソレってドラゴンの正装だったりする?」「おいおいスケイルロードってこんなのがシュミだったの?」口々に勝手なことを言う若造達に、スケイルロードは怒りの咆哮を上げた。

「グゥォォオッッ➖➖オゴォ!? オッ!? オッツ!? ふがぁぁッ❤ 尻に、股にィィィなんだこれはァァァアアッ❤」

数多の悪党を怯えさせてきた竜の咆哮は、しかし不甲斐ない声が出るばかりだった。このような刺激、まるで考えていなかった。この世のどんなものにも負けぬ龍の鱗を貫いて、グイグイと体の奥に快感と刺激が入り込んでくる。つまりこれは、この世のどんなものより強い、快感だ。

「なぁあのマンキニ、ヒーロースーツってことはさ、ポチッとボタン押してみようぜ」

「ええ、ドラゴンにこんなものききっこないよ~へへ」

一人がまるでイタズラのピンポンダッシュのような態度で、手元に機械の大きなボタンを取り出した。そして、なんの躊躇いもなく押し込んだ。

「ヌハァァア!? あああ締め付けが、食い込みがァぁあ❤」

その瞬間、甘くキツイ刺激がドラゴンを∨字に攻め立てた。ギュウギュウと締め付けられると、肩と尻と胸と肉棒と、そして股間のスリットが同時にジュクジュクと振動する。眼の前で閃光が弾けて、肉体すべてが性感帯になったような感覚だ。

「あれあれ、スケイルロードどうしちゃったんですか~」

そう言いながら眼の前で笑う男が、まるで神のように思えてくるような素晴らしい快感。今の一瞬のためならば、これまでの過去を投げ捨てても構わない……そう思えるような。

「ち、違うそのようなものは、まやかしだッ、断じてない!」

このスーツは誇り。永く生きることの出来ない者たちが、不断の努力で作り上げてきた技術の結晶だ。儂はそのようなものを身に着けているのだ。スケイルロードは己に言い聞かせながら、ガクガクと震える脚に力を入れて仁王立ちになった。

「き、貴様ら、こ、このようなもので、ヒーローが止まると思ったら、お、大間違い……ン………ムゥゥ❤」

美しいまでの∨の字を黄金の体に浮かび上がらせて、スケイルロードは引きつった笑いを浮かべた。

「わ、儂が決して負けることはない、止まることはない、貴様ら小僧にとびきりの仕置をくれてや――ンォォオ❤❤


 しかし、そのように雄々しく振る舞おうとすればするほど、逞しく鍛え上げた体にマンキニが食い込み、竜の体に未知の快感が貫く。無敵の鱗の内側で、長年愛されることのなかった性感帯がグイグイと刺激される。

(こ、これではァぁ、儂も、おぉぉぉお❤ 儂も他の者達と同じような、情けない雄の一体になってしまうではないかぁぁ❤ そ、そのようなことは許されない、儂はドラゴン――ッ! 誇り高き竜種であるぞ……そのような、そのようなッ❤❤)

「なあなあ、これってもしかして、俺らスケイルロードまで手に入れたってこと?」

「そうだよな……? そうなるよな! うっしゃあ、これなら他のヒーローたちだって一網打尽にできちゃうぞ!」

「な、なにをぉ、か、、勝手な事を言っているッ! このスケイルロードが貴様らの手駒になどなるものかァァァ……❤」

 怒るスケイルロードだが、その目は濁り、周辺への警戒もまるで出来ていない。そんな彼の背後に、一人の男が忍び寄る。

「よし、今だやれ!」

「か、かしこまりましたぁ❤ 申し訳ありませんロードッ❤」

 背後から忍び寄ったヒーロースーツの尖兵が、跳ねを避けるようにドラゴンの肩に手を伸ばした。そしてそのまま、思い切り引っ張った。

「おごっぅぅおぉぉ❤


グイと持ち上げられて、ヒーロースーツ……いや、この者たちがマンキニと呼ぶ衣装が竜の股間と尻を襲う。

「おじさんマンキニ気持ちよさそ~、ほらほら怒ったりしないで、気持ちいい時は、もっとヘロヘロになっちょうね~~


ヒーローを襲うなど、なんと嘆かわしいことだろうか。この竜をしてオジサンなどと、なんと不遜な小僧だろうか。哀れすぎて怒りも湧いてこない。怒り……そうだ、怒るべきなのに、感情が何故か湧き出てこない。

「ハァハァ………アァァ❤」

これほどの快楽を与えてくれる者に、一体どうして怒ることが、憎むことができるだろうか。

「こ、小童共、い、今ならば……説教だけで勘弁してやるッ❤ 彼らと儂を開放し……今すぐッ投降をッォォオッ……


「ほい」

「ンゴォォオ❤ すごっ、すご、こ、これ、マンキニがぁぁあ❤ マンキニ、マンキニがぁぁ❤」

膝が折れ、ガニ股になり、一転して無様な格好で喘ぐ竜の声に、とうとう大きな笑いが起きる。屈辱だ。研究者や他ヒーローたちの努力と愛の結晶たるヒーロースーツをこのように卑猥に扱われることは、竜だけでなく彼らの愛への侮辱である。愛。そうだ、このスーツは彼らの愛の象徴。そんなものが肉体に食い込めば、それは……愛おしさで思考が濁りもする。


「――あァ」


 思考が愛に及んだ瞬間、スケイルロードの股間の雄はかつてないほどに強く逞しくなった。そして、同時に楽になった。肉棒が体内から抜き出た時のように。我慢していた欲望を開放した時のように、とても、とても楽になった。


「ほらほら、スケイルロードの股間も、もっとエロいことしたいって言ってるよ、こんなにドロドロのエロンエロンになってるよ~」

「……………。そ、それは違う…………ぅぅぅ


「違うって、なにが?」

彼らの理解の及ばないのは、仕方なきことだ。教えてやらねばならない、導いてやらねばならない。それが、年長者であり、強者であり、竜であるこのスケイルロードの役割なのだから。

「これは愛の結晶なのだァァ❤


「え、なにいきなり」

「これは、愛……、そ、そうだこれは、この……マンキニは、愛なのだぁあ……ああ、マンキニィィィィッッッ❤」


事件解決からマイナス960秒

敵対戦力の全無力化完了。武装解除及び、敵意消失。


「えー、もう準備しなくっていいのか?」

「大丈夫だって、考えてみろよ、こっちにはスケイルロードがいるんだぜ? へへ


「そ、その通り❤ ンチュ――ムゥウ」


武器を捨て、警戒を解き、彼らはスケイルロードの竜のマズル、豪炎を吐き出す口を、代わる代わる奪い合っていた。

「ぬぉおもっと、もっとしてくれえぇ❤ 私のこのガチガチのドラゴンチンポを触ってくれえ❤ 尻を、尻尾を、揉んでくれえ❤ あぁぁこのような欲望が、竜に備わっていたとはぁ❤❤」


 攻撃の意思を捨て去ったことで、彼らは皆我がこのように甘えてくるだけの存在となった。最初の抵抗が懐かしいくらいだ。あの程度の反抗など、今となっては愛おしいくらいなものだ。

「ねえねえもう一回さっきのやってよ」

傍から見れば命令のように聞こえるかもしれないが、それは違う。コレは単なるお願いだ。竜として、それを叶えることはそう難しいことではない。ならば付き合ってやるだけだ。

「よ、よろしい、さあ見るがよい、スケイルロードの、んほッ❤」

スケイルロードはガニ股になり、愛しい愛しい体に食い込むヒーローマンキニを強調させた。竜のスリット、竜の尾、そして竜のペニスが丸見えになるように正面を向き、翼を大きく左右に広げる。

「これが、ドラゴンマンキニッ、ヒーローマンキニである、マンキニッマンキニィッ❤❤」




 そのまま翼と手、そしてマンキニで∨を強調する。それはまるで、数百年と繰り返してきたかのような見事なポーズだ。

「オォォン❤ これはたまらん、たまらんぞぉお❤」

「なにがどうたまらんのですかー?」

「マンキニッ❤ は、ハイ! これは気持ちがいいのだ! このポーズをすると、全身にマンキニが食い込んで肉体が気持ちいい❤ そ、そして、無様な姿を晒すことで精神も犯されるようで、最高に気持ちいいのだあァ❤❤ マンキニッマンキニッ❤」

 竜の誇り、他種族への愛、そして不慣れな快感。オナニーも知らぬ竜は、覚えたての『快感』というものに対して、まるきり滑稽な手段で適応してしまった。

「み、皆の者も、儂を手本にするがよいッ、こ、こうすると、とてもおぉぉ、幸福な気持ちで満たされて、ジンジンと下半身が……んホォマンキニィマンキニぃ❤」

「結構でーす、見てるだけで楽しいしー」

「んホォォマンキニマンキニィ❤ おぉぉまた出るッ、儂の生殖器から、ふ、不必要な種汁が出るゥマンキニで出るゥ❤ マンキニぃ❤ マンキニィィィ❤❤



事件解決からマイナス850秒

敵の手に落ちたヒーローたち対話開始。


「よいかァ……もう一度、もう一度教えるぞ、こうだッ、こう……さあ見ろ、よく見ろ、儂のマンキニを見ろォ……❤」

「あ、憧れのスケイルロードの命令とあらば、き、聞かないわけにはいきませぬ❤ あぁ……す、すげえ食い込みがァ」

「あぁぁ……ヒーローがこのよう格好を、むほ❤」

 ヒーローたちはズラリと並んで、ただ一人のドラゴンに視線を集めていた。

「マンキニッ❤ こ、これは、これは気持ちぃ❤ ぬふぅぅ❤」

「あぁぁスケイルロードの、さすがでありますッ、自分はこんな、こんな素晴らしい気持ちは初めてであります❤ マンキニ❤


「マンキンィマンキニ❤ さあもっと腰を落とすのだ、腕を素早く引き抜くのだ、この儂のようにマンキニを味わうのだぁ❤」

  スケイルロードはヒーロー達の前に立ち、彼らのヒーロースーツの改変を次々に行っていた。伝説のヒーローに導かれ、彼らは誇り高きヒーロースーツを次々に「進化」させ、より自分たちを気持ちよくさせるための道具へと「適応」させいく。

「おぉぉおんん良いのでしょうか❤ このような行為、ヒーロースーツをこのようなはしたない格好にィ❤」

「なにをいうか、このマンキニの形状こそ、もっとも我々を幸福に導く合理的で英雄的なものであるぞッ❤ 儂達をサポートするために作り上げられたこのスーツを、よりよい形で運用することは我々ヒーローの責務である、マンキニッ❤


「か、かっしこまりましたスケイルロードッマンキニ❤」

「うムッ❤ わかればよろしいッ❤ おっぉおこれで全員か、全員わしと同じマンキニを身に付けたのかッ❤ おぉぉなんとも壮観な光景ではないかァ❤ アァア儂らは皆同じ志をコスチュームを身に付けたヒーローッ、そう、マンキニヒーローであるッ❤ おぉぉお❤ マンキニッ、マンキニィン❤

 

 スケイルロードは自らが発した台詞に感極まると改めて腰を深く落として凄まじい勢いでポーズを繰り返した。威厳ある髭面の竜が、快楽で濁りきった顔でヒーローたちをまっすぐ見つめる。その瞳をヒーローたちもまた見つめ返す。そして命令を待たずして同じようにマンキニポーズの真似をする。それは感激で涙が出そうな光景であった。しかし出そうなものは涙だけではなかった。

「あッ❤ あッ❤ マンキニィ❤ マンキニィッッ❤ い、イグゥゥウマンキニで竜の種が出るゥゥウ❤ 出るぞ、出るぞォ、見るのだ、こ、コレが正しいマンキニの味わい方だァァ❤ マンキニッマンキニィィ❤ ヒーローに栄光あれェ❤❤ マンキニスーツに栄光あれぇぇぇ❤❤❤」

 いい歳をした逞しいヒーローたちに対して、まるで初めての体験のようにドラゴンヒーローは射精を公開した。正しい射精、正しいポーズ、そして正しいヒーローのあり方を見せる。まさに、出立前に博士に対して語っていた通りのことを、スケイルロードは行っていた。行ってしまっていた。

「オォォ俺もイクゥッ! 我々と一緒にイキましょうマンキニロードッマンキニィィ❤」

「おぅぅうマンキニロードとはなんとも、すばらしい名前だッ………あぁぁマンキニマンキニッ、儂はマンキニロード、ドラゴンヒーローマンキニロードだぁぁ❤ マンキニッマンキニッ❤❤」


事件解決からマイナス250秒

ヒーロー名の最適化を完了。工場内の全ヒーローに適応


「わ、私はアイアンホーンの名を捨て、今日からマンキニホーンと名乗らせていただきますッ、マンキニからはみ出るでっかい角チンポきもちぃいーマンキニ❤ マンキニッ❤」

「俺様はブルチャージ改め、マンキニチャージッだぁ❤ マンキニマンキニ❤ マンキニパワー全開ィ❤❤ マンキニィィ❤」


事件解決からマイナス470秒

ヒーロー全員の射精を確認。


「ぬぉぉおイグゥ❤ マンキニ射精ィ❤」「こ、こんなものを味わったらもう戻れないィィ❤」「父さんマンキニヒーローになっちまったぁ❤ マンキニマンキニ❤」「おごぉぉマンキニロードと一緒にマンキニ光栄でありマンキニィ❤」「マンキニマンキニッ❤❤」


事件解決からマイナス65秒

敵対戦力の接近を確認。迎撃開始。


 工場に潜入したスケイルドロードからの連絡が途絶え、万が一に備えて待機していたヒーローたちが見たのは、信じがたい異様な光景だった。

「あ、アレは一体」

「スケイルロードなのか……本当に


「す、姿を真似るヴィランの報告は……なかったか?」

 そこに輝くのは黄金の翼、黄金の鱗。夜空も明るく照らし出す、伝説のドラゴンそのものだ。だが、その姿に数百年にわたりヒーローたちを導いてきたスケイルロードの威厳はなかった。

「スケイルロード………?」

彼を送り出した博士が声をかけた。

「マンキニィ❤ マンキニ❤ その問い掛けは正確ではない、だが、問題ないぞ、儂の名を知らぬのはのないことだ、儂はスケイルロードではない、儂の名はマンキニロードッ❤ 貴様ら若き未熟な者たちを助ける、正義のマンキニヒーローであるッ、マンキニッ❤ マンキニィン❤ さァ貴様らにも私達マンキニヒーローたちが、正しきマンキニを教えてしんぜよう❤ マンキニ❤ さあ皆のもの、我らの愛を見せてやるのだぁ❤ マンキニ❤ マンキニ❤マンキニ❤ マンキニ❤マンキニ❤ マンキニィィ❤



事件解決からマイナス39秒

残るヒーローたちへの説得を開始。

事件解決からプラスマイナス0秒

ヒーローたち全員のマンキニ化成功。




世界平和完了までマイナス7344000秒

マンキニヒーロー部隊行動開始

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